3話 牛乳嫌い促進強化

文字数 680文字

 何度も書くが、私は牛乳が嫌いだ。
 給食の牛乳は飲まずに持ち帰っていた。
 それは学年が上がっても同じだった。

 担任はそれについて特に何も言わなかった。
 やがて、担任が産休に入って、代理の先生が来た。
 この先生は、私が牛乳を飲めない事を問題にした。
 そして、「飲め」と強制した。
 最初は一口。
 その次は三分の一……と言った感じで量を増やす。

 飲めない分は『残りは捨ててきていいよ』と先生は言った。


 私は耳を疑った。
 それまで私は「食べ物を捨てては、いけない」と習ってきた。
 牛乳も『捨てるくらいなら、持ち帰ってきなさい』と、母が言ったから持ち帰ってきた。
 それを、先生は簡単に「捨てろ」と言う。
 私は牛乳を捨てた。
 白い液体が排水溝に吸い込まれていくのを見ていた。

 牛乳を口にするたび、頭からかぶった記憶がよみがえる。
 牛乳を捨てる度、食べ物を捨てる罪悪感でいっぱいになる。
 午後の授業は口の中が気持ち悪くて、授業に集中できない。
 最終的には『全ての飲め』と言われて、飲んだ。
 それを見て、代理の先生は満足げに「飲めるじゃない」と言った。

 早くこの先生が居なくなればいいのに、と思った。

 担任の産休が開けて、代理の先生が居なくなると、私は牛乳を持ち帰った。


 牛乳を頭からかぶる記憶はよみがえらなくなった。
 罪悪感もなくなった。
 授業も集中出来る様になった。

 担任は私が牛乳を持ち帰る事には、何も言わなかった。
 代理の先生は「食べ物を捨てる罪悪感」を私に教えてくれた。
 私は今も牛乳を頭からかぶった記憶と、牛乳を捨てる記憶と、飲んだときの気持ち悪さが忘れられない。
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