6話 アルバイト

文字数 823文字

 赤痢の騒ぎも忘れた頃に、アルバイトをすることを考えた。
 働いた事がないという事が、いけない事のように思えたからだ。
 私は求人情報で見つけた飲食店へ応募して、受かった。

 が、一日で自分には合わない事を悟った。
 失敗が多すぎて、迷惑もかけたので、使えない人間と言う判断もくだされた。
 少しだけ親しくなった先輩が帰りに送ってくれて、少しだけ話をした。

「うちの店、トイレに塩があったでしょ?
 あれね。×月にお客さんから赤痢が出て、うちの店じゃないかって疑われたの。
 ちゃんと検査をしたけれども、何も出てこなくて、うちじゃないんだけど。
 その後、客足も落ちるし、よくない事も続くしって事で、お(はら)いをしてもらった。
 その時に、トイレに塩を置いた方が良いって言われて、そうしているのよ」


 そこで、その赤痢の話、うちの寮の話かなと思った。時期もちょうど合っていた。
 他で赤痢が出たという話は聞かなかったので、たぶん、うちの寮だと思っている。
 まさか、他の飲食店も調べられているとは知らなかった。

 そんな話を聞きつつも、自分には合わないと思ったバイトはやめる事にした。


 ある日、学校からの帰り道に他の学校の子とあった。
 同じ寮で違う学校だけど、寮の友達と仲良くしている子だった。
 寮の友達もその子もアルバイトを探していた。

 あるお店の前を通ると、アルバイト募集の張り紙があった。
 それを見ながら、「ここ、いい感じのお店だね。一緒に応募しようよ」と彼女たちが話し始めた。
 可愛(かわい)い感じの雑貨屋さんで、寮からも近い。

「ねぇ。カタチさんも、一緒に応募しない?」

 私も誘われたけれども、断った。

 彼女たちは二人で応募して、二人とも落ちてしまったと後から聞いた。
 再び、他のお店にもチャレンジしてみたけど、落ちてしまったと言っていた。
 その後、「一緒に応募するのってよくないみたい。別々に応募しよう」と、片方が言い出した。
 それ以降は一緒に応募をするのを、やめたようだった。
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