16話 転校一名

文字数 707文字

 入学してすぐに話しかけてきた子が居た。
 その子と仲良くなることはなかったし、私に話しかけてきた理由もよく分からない。
 大人しくて、扱いやすそうと思われたのかもしれない。

 私はクラスではほぼ誰とも話さない学生生活を送っていた。
 それまでは、何だかんだと声をかけてくれたこたみちゃんもいない。
 特に話したい人がいる訳でもなければ、親しくなりたい人がいる訳でもない。
 それまでも話さないことが多かったけれども、保育園に戻ったのでは?と思うくらい誰とも話さなかった。
 一つだけ違うのは、『必要最小限』は話していた事。
 話しかけられれば答えるし、当てられても答える。それ以外は用事がない限り、話さない。
 友達が居ないという事は静かで落ち着いた日々で心地よかった。
 唯一、グループになる時だけは困ったが、それもしばらくすると、無理やり押し込まれるグループが決まった。

 2年になると、クラスメイトの一人が転校していった。
 最初に話しかけてくれた、病気をして一年留年していた子だった。
 特に誰も気にしていなかったし、気にしなければ気が付きもしない1年の差。
 成績が悪かったからだとも言われていたけれども、実際のところはどうなのか分からない。
 ただ、彼女は担任が顧問をしている『女子運動部』に入っていた事が少しだけ気になった。
 もしかしたら、運動部で何かあったのかもしれないとまで頭に浮かんだ。
 彼女は部活では活躍していたという事も(うわさ)で知っていたからだ。
 彼女が抜けたら、部活は大きな戦力の一部を失いのではないのだろうか?なんてことまで思ってしまった。

 何が事実なのかは分からないが、とにかく2年になって一人クラスメイトが減った。
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