24話 学科消滅

文字数 1,157文字

 卒業前、事件の事も一段落した頃に元担任から手紙が来た。
 それを読んだ後は……破り捨てたくなった。
 それほどひどいものだった。
 実物は無いので、記憶にある限りで書くとこんな感じの手紙。

『○○さんへ
 こんなことになってしまって、ごめんね。
 けれど、先生は何もしていません。信じてください。
 誤解されてしまい、本当に悲しいです。
 みなさんと卒業できなかったのは残念です。
 ○○先生(副主任)の言う事を聞いて、受験を頑張ってください』

 事件については事実かどうかは確認しようがないので、置いておくとしても……内容が(ひど)い。
 これ、小学生宛てに書いたのだろうか?
 先生の言う事を聞いて?……聞かない悪ガキがいるとでも?
 言葉ももう少し大人向きにして書いてもいいと思う。
 容易な言葉しか(つづ)られてなくて、高校三年生の理解力を()めているとしか思えなかった。

 保護者への手紙もあって、それは普通だった。
『この度は、こんな事になってしまい申し訳ありません。
 私が至らぬばかりに、誤解をさせてしまったことを謝罪します。
 ――(略)』
 ……保護者向きのと、同じ言葉で良いんだよ。
 ごめんねって……これだけの事件を起こしておいて、よく言えるなとすら思った。


 そんなわけで、担任は不起訴になって別の教育施設へと異動になった。
 そこへ異動になった理由は、学校へは置いておけないということなのだろうと思った。
 学校ではないけれども、教育委員会の管轄で生徒との接触も少ない。
 ほとぼりが覚めたら出てくる……と思っていた。
 15年以上経って、異動の情報を見つけた。
 ほとぼりが覚めたので普通の高校へと異動になったようだった。


 話は高校へと戻る。
 私が通っていた、就職コースの学科は受験者が減った。もちろん、他の科もだ。
 事件の2・3年後に就職コースの学科自体が消え去った。
 少子化の影響もあるかもしれない。
 けど、3クラスある受験コースではなくて、1クラスしかない就職コースが消えたのはあの事件の影響しかないと思っている。

 担任が顧問をしていた『女子運動部』はなくなることはなかった。
 けれども、昔のように強豪ではなくなった。
 ネットを見ていると、「昔は強かったのに、なぜ、今は強くないの?」という書き込みを見かけた。
 他にも「昔は就職コースがあったけど、なぜ消えたの?」というのを見かける。
 あの事件を知らない世代になったという事だと思う。


 進学後も高校の名前を聞かれる事は、屈辱でしかなかった。
 履歴書に書く事さえ、『あの事件を知っているのでは?』という要らぬ心配をした。
 もちろん、どちらも考えすぎな事で、なにもないのだけれども……。

 学校の評判を下げた先生はいまだに先生をしていて、評判が下がった学科は消え去った。
 それは、おかしいと今でも思っている。
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