5話 学年主任が担任に

文字数 726文字

 授業にならない日々が続き、おそらく学年でも話題になるほどの問題となっていたと思う。

 ある日、朝から学年主任がやってきた。
「しばらく、担任を交代します」
 と大ベテランの先生は言った。

 そして本当にその日一日、大ベテラン先生が担任をした。
 男子たちがいつものように騒ごうとするが、空気が違うので騒げない。
 お嬢様もいい子の顔を見せて、男子たちには何も言わない。
 ちょっとした騒ぎは最初だけですぐに、静かな一日が始まった。
 そしてそのまま、静かに一日が終わった。

 次の日も大ベテラン先生が担任だった。
 大きな騒ぎは起きなかったが、小さないじめ(暴言や軽く(たた)くや蹴る)は相変わらずだった。
 もちろん、先生たちの見ていない場で起きている。
 そして1週間ほど経って、担任は元に戻った。
 先生たちが「もう大丈夫だろう。静かにしようと思えばできる子達だ」と判断したのは明らかだった。
 けれど、問題は何も解決していない。

 新任先生が戻ってきた途端、教室はいつもの騒がしさに包まれた。
 先生たちが怒鳴りこんでくる。
 そして、こんなセリフが付け加えられた。

「大ベテラン先生の時は静かにできたじゃないか」

 あれは、あの時限りだと知っていたから、静かにしていただけでしかない。
 新任先生がクラスをまとめることが出来ないのは明らかだった。
 男子たちは授業をする気はなく、お嬢様も騒ぎに乗る。
 授業よりも楽しくおしゃべり出来る方が、お嬢様は好きだった。


 別に新任先生のせいにする気はない。
 あの時代に学級崩壊という言葉はほとんど聞かなかったし、新任先生が担当するには厳しいクラスだったろうなと思う。
 いろんな試行錯誤の結果、問題は何一つ解決しなかった。ただ、それだけなのだと思う。
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