9話 自動車免許と工場

文字数 743文字

 卒業した私は実家に戻った。
 2年間遊んだ私は、そこで「生きていけない自分」を自覚した。
 就職した方が良いんだろうなと言う漠然とした感覚と、
 車がないのに就職が出来るのか?という不安の間で、私は無職の日々を送った。

 免許だけは学生時代に取った。
 親が取らせてくれたからだ。が、ここで私は、何度も事故りかけ、一度は人をひき殺しかけた。
 理由は簡単で、以前書いた通り、授業を忘れてしまうくらいの精神状態で車を運転していたからだ。
 ついでに、自動車学校でも授業を一つ抜かしてしまうという事をやってしまった。
 状況把握がほぼ出来ていない上に、運転中の記憶はほぼない。
 怒鳴られてやっと、状況確認すると記憶に残ると言った感じだ。

 もともと、免許取得に積極的ではない上に、楽しくないから覚えていたくないのだ。
 教習所内で脱輪する程度なら構わないだろうが、公道は誰かを殺しかねないなと思いながら運転していた。
 それでも免許が取れたのは、練習中にどんなに危険な運転をしていようが、テストをクリアすれば取れるからだ。
 記憶力とテストのポイントを押さえるだけの正気はあったと言える。

 卒業後、数カ月たった頃にパートの仕事をした。
 工場系で時給680円(当時の最低賃金)だった。実家暮らしなので、お金に困ってはない。
 車がないので、自転車で通える範囲……とはいえ。片道4、5キロはあったと思う。
 そこは、中年の女性ばかりで馴染(なじ)めず、さらに製品の数が合わない事を私のせいにされて、辞めた。
 製品の数はおそらく最初から足りなかったらしいと、少しだけ仲の良かった中国の人から聞いた。

 仕事が続かない事は何となく予想していたので、特にショックではなかった。
 気楽に次を探そうと探したが、ド田舎に『車なし』で雇ってくれるところは少ない。
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