3話  先生いじめ

文字数 879文字

 いじめられっ子の物が壊されたり、無くなったりするたびに先生は
「そんな事をしてはいけません」
 と丁寧に注意する。
 先生は犯人探しをしないし、特定の人物への注意をしない人というレッテルがすぐに張られた。
 いじめられっ子には自分を助けてくれない人として認定されたと思う。
 クラスの誰もがお嬢様がやっている事を知っていた。
 先生にそう訴える人もいたが、先生は聞かなかったし、恐らくだが「子供同士のおふざけ」だと受け止めたのだと思う。
 いじめっ子側のお嬢様にとって先生は、上手く丸め込める人だったと思う。


 やがて授業も、ままならなくなった。

「静かにしなさい!!」
 と先生が叫んでも誰も聞かない。
 いや。聞いている人たちは、そもそも騒いでいない。
 先生が教室に来ても、授業が始まるまで時間がかかる。
 下手をすれば、ずっと騒ぎっぱなしで授業が終わる。

 積極的に騒いでいるのは、男の子達だ。
 お嬢様はただその状況を黙って面白がっているだけ。
 どうやって男の子達を(あお)っていたのかは、よく分からない。
 けれども、あのかわいい顔で「授業なんて、つまんない」などと言うだけで、男の子達は必死に授業をつぶしてくれただろうと思う。

 さらにしばらく経つと、もっと状況は悪化した。
 最初はいじめられっ子や適当なターゲットを相手にしていた黒板消し落としが、先生に対して行われた。
 一度や二度ではない。
 もちろん、先生もバカではない。そうそう続けてひっかかる事はしない。
 やる側は『忘れた頃に再び』やる。
 そうやって、先生は何度か引っかかっていた。

 一度は水の入ったバケツに先生は引っかかった。
 廊下側からは見えなくして、上手く引っかけていた。
 先生は何も言わずに職員室に戻っていって、ジャージに着替えて教室に戻ってきた。

 それ以降はドアを開けた後に少し待ってから、先生は入ってくるようになった。
 そして、引っかかるような事はなくなった。
 やる側もつまらなくなったのだろう。黒板消し落としはやがて、消えて行った。

 けれども、いじめが消えたわけでもなければ、授業が平常通りになることもなかった。
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