13話 惰性の担任

文字数 926文字

 高校の担任は、特に特徴のない男性だった。
 誰かに似ていたとか、面白いという要素とかは見当たらなかった。
 ただ、担任が顧問をしている部活が結果を残していて、それは担任のおかげという事らしかった。
 それまで弱小だった部活を強くしたのが担任なのだと。
 それを聞いたとき、授業やその他の対応からは、全然考えられないなと思った。
 なぜなら、担任は今までのどの先生よりも手抜きだったからだ。
 大人の社会なら『容量が良い』とも言うのかもしれない。
 けれども、ここは学校。
 まだ子供だった私には『手抜き』としか見えなかった。そして、今も『手抜き』だと思っている。

 例えば、避難訓練などで外に出た時。
 後は帰るだけの時は「隣のクラスの先生の説明を聞いておけよ」と、自分は一切説明をしない。
 隣のクラスの先生に頼んでいるわけでもないので、隣のクラスの説明はすでに始まっていて、最初の説明は全く分からない。
 わからなくても大した説明はないのだから、特に困らないのだが、そんな丸投げの方法があるのかと思ってしまった。


 私の通っていた高校はアルバイトは基本禁止だった。
 夏休み前などには「アルバイト禁止」の説明も出てくる。が、担任はそこで
「でも、ばれなきゃいいんだよ。ばれたら、メンドクサイ。内緒でやってもいいけど、ばれるなよ。
 俺が見つけても見逃すけど、他の先生は見逃してくれないぞ」
 と、言ってのけた。

 もちろん、先生によってはそんな先生がいてもいいとは思う。けれども、それはクラスの中で言うことなのだろうか?
 もっと親しい生徒にだけや、別の時間に、『実は……』と話すなら分かる。
 夏休みの注意事項の一つアルバイト禁止を説明している時に、堂々と手のひらを返したことを言うのには、違和感があった。

 この時の「ばれなければいい」という言葉にはとても引っかかった。

 この先生なら、「ばれなければ」何でもしそうだなと嫌な感じがした。

 高校3年間、就職コースは一クラスなのでクラス替えがない。
 何もなければこの担任が3年間ずっと一緒と言う事も、入学時に説明があった。

 変わらないクラスメイトに、変わらない担任。
 卒業まで一緒なのかと思うと、『慣れるしかない』という諦めしかなかった。
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