6話 いじめあいクラス

文字数 976文字

 日々、誰かがいじめのターゲットになる中で、スズメちゃんがお嬢様の取り巻きになった。
 社交的なスズメちゃんは、お嬢様に気に入られた。
 取り巻きの半分は面白半分、半分は嫌々という感じだ。
 断るといじめのターゲットになるのだから、大人しくお嬢様の傍に居る方が無難だ。

 けれども、傍に居るという事は機嫌を損ねて、暴言や暴力を受けることも多くなるという事だ。
 そして、物を壊されたり、取られたりも増える。
「わぁ。これ、いいね。ほしいなぁ」
 とお嬢様が強請る。「いいよ。あげるよ」と言うまで「欲しい」が続く。
 もしくは、お嬢様が怒って
「あんた何様のつもり?こんなの似合うわけないじゃん」
 と最終的には、顔に似合わぬ暴言が()き出され、手が出て足が出る。
 または、やがてお嬢様が機嫌を損ねて「あ。ごめん。ふんじゃった。壊してごめんね」みたいな事になる。

 一番いじめられていた子は、取り巻きになっていた。
 気弱で体も小さくて、逆らいそうにない人間。……とはいえ、人間にも限界はある。
 そのうちお嬢様の物がなくなったり、壊されたりするようになった。
 誰がやったのかはすぐに想像できたし、たぶん、想像の通りだったと思う。
 けれども、誰もそれを言わなかった。

 お嬢様は先生に「ひどい。誰がやったの」と訴えた。
 先生も「誰がやったのか言いなさい」と犯人捜しをした。
 クラス中が静かに茶番が過ぎるのを待っていた。
 かわいいお嬢様の言葉は先生には届くらしい。
 やがてお嬢様がしびれを切らして、「あなたがやったんでしょ」といじめられっ子を指さした。
「違う。私じゃない」
 その子はそう言った。
 誰もがウソだと思ったけれども、誰もそれを指摘しなかった。
 彼女がそうした理由を、みんなが知っていたから。


 結局、うやむやに終わってしまった。

 いじめはもう、一方通行ではなくなった。
 加害者は被害者に、被害者は加害者に。
 傍観者は共犯者に。

 先生たちだけが、授業中の騒ぎだけを気にしていた。
 生徒が気にしているのは、授業の進み具合などではないし、授業ができるか、できないか、でもない。

 自分がいじめのターゲットにならないように、うまく身をかわすためにはどうしたらいいのか……それしかない。
 いじめはダメだなんていう道徳はどこにもない。
 だって、誰も自分たちを守ってくれない事は明白なのだから。
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