15話 嫌な感じの印象

文字数 659文字

 高校に入って、初めての三者面談の時だった。
 いつものように、可もなく不可もない会話で終わって、母と教室を出た。

 次の人が入ってくのを目の端で見つつ、廊下を歩いて教室から離れて行く。
 教室から離れて、階段を降りながら母がぽつりとつぶやいた。

「なんだか……」

「んー?なにー?」
 母の言葉が途切れたのが気になって聞き返したが、母は無言だった。

「何?気になるんだけど?」

「ううん。やっぱり、気のせいだと思うから……あんたは何も思わないんでしょ?」
「えー?何よ?途中でやめないでよ」

「じゃぁ。言うケド……嫌な感じね」

 母からは担任が嫌いとか、気に入らなかったとか、そんなものは感じない。

「え?どこが?」
「わからないけど……何となく」
 それまで母が嫌悪を表したのは、中学の時の『元いじめっ子の先生』ぐらいだった。
 けれども、その時は明らかな理由があった。

 今回は何もない。何もないのに、『嫌な感じ』だと母が言う。
「気のせいだよ。特に理由はないでしょ?」
「そうだけど……あんたは何か感じなかった?」

 そこで、担任が女子運動部の顧問だと聞いたときの、何となくザワリとした感じを思い出していた。
 他にも「バレなければいい」という思考。時々感じる違和感。

「特に何もないよ。普通の先生だと思う」

 母に言いながら、思い当たる節があった事も引っかかった。
「だったら、気のせいね。何もないのに、失礼ね」
 階段を下りて、校舎を出るころには話題は別へと移っていた。

 この時は『気にしすぎ』と思っていた。
 それが正しい感覚だったと知るのはもう少し後。

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