3話 両親の話

文字数 928文字

 ちちと ははの おはなし


 父と母が出会ったのは、子供の頃だったらしい。
 ただ、母はその事を覚えていない。
 だから、これは父から聞いた話。

 父と父の兄は少し年が離れていた。兄弟仲は良かったらしい。
 ある日、父の兄の友達の家へと遊びに行った。
 その「父の兄の友達」が母の兄だった。
 父(いわ)
「パンツが見えそうな女の子が居た」
 と記憶に残っているそうな。
 その女の子が、母だった。



 さて、ここからは母の話。
 中学を卒業した母は勤めに出た。
 寮のある工場へ行ったらしいが、合わずに家に戻ってきた。
 そこで、親に和裁を習うように勧められた。
 いわゆる『花嫁修業』の一環である。
 母が着物を縫っている姿は見た事がない。着ているのも見た事がない。
 話がそれるが、母の姉は洋裁を習ったらしい。
 ミシンでいろいろなものを作っているのを見たことがある。
 とにかく私は目にすることはなかったが、母は和裁教室で楽しい日々を過ごしていたようだ。
 まだ中学校を卒業したばかりで若い母と、それなりにお年を召した先生で山菜採りなどにも行っていたらしい。

 それからしばらくして、母は青年団に入った。
 親に聞くと反対されたとも言っていたが、反対されてから1年後くらいには青年団に入っていた。
 青年団にはかっこよくて、女性に人気だった男性がいたようだ。
 ある時、その男性にダンスに誘われて母は踊ったらしい。
 母のダンスの経験は皆無である。
 何度も足を踏んでしまったそうで、それ以降誘われる事はなかった。

 さて、父もその青年団に居た。
 父の存在は薄かったらしい。最初は母の記憶には残っていなかった。
 ある日、おにぎりを配る事があったらしい。
 恐らく男性陣は何か力仕事をして、女性陣が食事を作る……みたいなものだったのではないかと思う。
 その時に、父におにぎりを渡したことは覚えていると言っていた。

 母は当時、工場へ勤めに出ていた。
 仕事が終わると、父が車で待っていた。
 送ると言うので乗せてもらって帰る様になったそうだ。
 無言で待っているから、最初は変な人だと思ったと母は言っていた。
 父は当時、学生だったので、時間だけはあったのだろうと思う。

 そんなわけで、父と母は付き合うようになったらしい。
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