4話 デート事情

文字数 903文字

   **河原デート**

 付き合うと言っても、父は当時学生でお金がない。
 大抵はお金がかからない、ドライブがデートになっていたらしい。

 そんなデートを繰り返していたある日。
 河原に車を停めた。
 そのまま、車の中でおしゃべりをしているとコンコンと窓を(たた)く音がする。
 窓を開けると警官がいる。
 そして……。

「君たち、パンツをはいて出てきてくれるか?」

 二人はおそらくキョトンとしたのかもしれない。
 なぜなら、パンツは二人とも履いている。
 ただ車の中でおしゃべりをしていただけなのに、脱いでもいないパンツを履けと言われたのだ。
 履くものがないので、そのまま車から出て、対応したらしい。


 この話、両親の時代の話かなと思っていたら、そうでもなかった。
 河原でいちゃつくカップルにはよくある事らしい。
 私と年が変わらない従姉妹も河原でデートをしていたら、職質を受けたと言っていた。
 河原デートは警察にご注意を。


   **遭難と駆け落ち**

 これは、父と母の結婚のきっかけになった……と言われていたデートの話。

 冬も二人のデートはドライブだった。
 その日は雪道の山をただ進んでいた。
 そして、雪に突っ込んだ。押しても引いても動かなくなった。
 冬の陽は短い。どんどん暗くなってしまう。
 今のように携帯電話なんてない時代だ。
 二人は車を諦めて歩きだして、警察に連絡した。
 警察が来て、警察署で一夜を明かした。
 翌日は家族が来て大騒ぎだったそうだ。

 母(いわ)く、『山で遭難しかけて、大変だった』というので、私はそう信じていた。

 でも、かなり後になって知った。
 家族……父母の両親にとっては認識が違ったらしい。

 この話は『駆け落ち』として親戚に広がっていた。

 従姉妹が「あなたの両親って、駆け落ちしたんでしょ?」というのでびっくりした。
 そんな話は一度も聞いたことがない。
 が、よくよく話を聞くと、この時の話が『駆け落ち』として伝わっていたらしい。

 ……確かに、(祖父母)からすれば『駆け落ち』に見えなくもない。



 おそらくこの件もあって、母の兄(伯父)は父に「(妹との結婚を)どうするんだ」と迫ったらしい。
 母の兄(伯父)がそう言っていた事は父から聞いた。
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