060 小泉純一郎首相はかく語りき
文字数 1,976文字
小泉純一郎首相は即座に「テロには屈しない」として自衛隊を撤退する意思がないことを明言した。関係各位の必死の努力の結果、最終的には三人は無事に解放され、自衛隊も撤退することはなかった。
帰国した三人に対し、小泉純一郎首相は「これだけの目に遭って、これだけ多くの政府の人が救出に努力してくれた。自覚を持っていただきたい」と苦言を呈した。これを受けて一部国民の間から、三人に対し「自己責任」と称してすさまじいバッシングが開始されたのだった……。
小泉純一郎首相のライオンの
「自民党をぶっ壊す」「聖域なき構造改革」など既得権益を害するようなことを平気で直言し、政界の異端児として変人宰相と
はたして郵政民営化などというものが、どれほど国民の利益につながるのか俺には分からないが……。
同時期に彼は、日韓共同訪問年広報大使として来日した『冬のソナタ』主演女優チェ・ジウの官邸訪問を受け、「鼻の下が長くなっちゃう」とおどけてみせた。冬ソナファンを自認する彼は、まさに硬軟あわせ持つ型破りな変人宰相である。
画像出典:首相官邸ホームページ
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大学教授氏の話は続いている。
「親は自分に自信があってエネルギーがないと、とても子供を叱ることはできない。親がオドオドしていたら、子供はすぐ敏感に察知します。
ところが最近の親、とくに父親は、世の中が不景気だリストラだということで、自分自身が経済的にやっていけるかどうか、そのことだけで頭が一杯になっています。自分に自信がない。だから子供を叱っても、自分の言うことを聞いてもらえるかどうか不安なんです。
自分に自信のない人間が、他人の生き方に干渉できるわけがありませんよ。ライオス王のように壁になることができない。
そこで自信のない父親は、最初から教育を放棄します。『子供自身が自覚しなければだめだ』というのは、じつは逃げ口上なんです。教育にタッチしたくないから、もっともそうなことを言って逃げている。日本の大人は、もっと自信をもって子供を叱るべきです。今やらなかったら、そのツケはきっと将来にくるのです」
「私たちが子供のころは、近所にかならずカミナリ親父や、口うるさい小母さんがいましたよね。自分の子供だろうが、他人の子供だろうが、とにかく悪いことは悪いと、はっきり叱っていた。社会全体で子供を教育しているという風潮がありました」
「ところが今は、日本人全体に『教育する力』が失われつつある。今の親は自分の子供が悪いことをしても、まるで他人の家庭を傍観するかのような第三者的態度をとります。最初から叱る気がないんです」
「この少年の家庭もそうだった可能性があると?」
「きっとそうでしょう。だって18歳の高校三年生といえば、ふつう反抗期ですよ。オイディプスがライオス王に立ち向かっていったように……。親とろくに口をきかないなんてのはザラです。
そういう態度を壁となった親が正面から受け止めて、ぶつかり合い、
「なるほど。じつは少年の家庭には、いろいろ問題があった。ところが父親が教育を放棄して、問題に何も干渉しなかった。だから表面的には平穏で、円満な家庭に見えた、ということですね……」
大学教授氏の妄想癖も、ここまでくると芸術品である。これで
俺の父親が教育を放棄していただと!? 自分に自信がなかっただと!? そんな馬鹿なことがあるか。俺の父は俺にとって、まさに壁だった。難攻不落の
俺は中学一年の夏にキセルをして、それが父に露見したことがある。そのとき父が示した意外な行動は、俺の人生観を決定づけたといっても過言ではない。