作品設定

文字数 6,012文字

【人物】

〇 日本勢力

 撓気十四郎時光 (たわけじゅうしろうときみつ)
 
 本作品の主人公。相模国撓気郷の生まれ。架空の人物。
 
 撓気氏本家の十四男であり、相続する土地が足りない事から執権北条時宗の任務を果たして恩賞として土地を貰う事を目的として行動していた。結果は最終話の通りである。

 撓気氏は代々土地を均等に分割している上に子沢山の家系であるため領地の広さで見れば弱小御家人である。ただし、戦の際には常に勝者になる方を判断する能力があり、また各人の武力も髙い事から総合的に見ればかなりの力を秘めている。

 また、奥州藤原氏討伐の際に現地の蝦夷と交友関係を持ち、それを通じてアイヌとの交易を進め、都の公家等とも繋がりがあるため財政的には豊かであり、それは高価な武具や書物に反映されている。

 そのため時光は後世国宝として伝わる刀を鍛えた綾小路定利の作品を所有しており、中国の古典等の書物を幼い頃から学んでいる。特に兵法書や史書は戦で役に立てるために重視しており、それは本編でも遺憾なく発揮されている。

 鎌倉武士であるため、時折物騒な事を口にし、実際に首を刎ねて晒すことで敵の士気を下げたり、臓物を引きずり出すくらいの事は何のためらいもなく実行する。ただし、無意味な殺生は好まず、異民族であるアイヌ、モンゴル人、ヨーロッパ人に対しても変わらない態度で接する。

 特技は弓術、馬術、刀術、相撲、兵法。語学は物語当初は日本語、アイヌ語、中国語、後半からラテン語、モンゴル語を習得している。



 丑松

 撓気氏に仕える郎党であり、時光の従者として蝦夷ヶ島について来た。架空の人物。

 従者の身分であるが、時光を幼い頃から知っており、武芸の師でもあるため時折ぞんざいな態度をとる。

 時光と同じく弓術、馬術、刀術、相撲を得意としており、特に刀術は時光を上回る腕前で独自に編み出した居合術を使う。

 元々独立した御家人の生まれであったが勢力争いで土地を失い、撓気氏に拾われていた。

 そのため時光の任務を支えることで独立することを目的としていたのだが、蝦夷ヶ島において妻帯することになり、恩賞とは関係なしに独立した。



 北条時宗

 鎌倉幕府の執権でありモンゴル帝国の襲来に備えて各種の対策を実施している。実在の人物。

 その一つが時光の蝦夷ヶ島への冒険であり、これにより北方からのモンゴル侵略に備えようとしていた。

 若くして日本の最高権力者になり、モンゴル対策という国難に取り組むという重圧に悩まされているが、それに打ち克ち最終的に日本を守り通した。そんな中、時光からは毎回「勝手に北方の有力御家人を殺害しました」、「勝手に官名詐称しました」、「勝手に敵の本拠地に攻め込みました」等の報告を受けているために毎回激怒している。

 蒙古襲来を退けた少し後にその短い人生を終えた。



 安達泰盛

 鎌倉幕府の要職を歴任している有力御家人であり、時光の蝦夷ヶ島探索を知る数少ない人物である。実在の人物。

 北条時宗の義兄弟であるためか二人でいる時は結構無礼な態度をとることが多い。

 実務能力に優れた人物であるが、人情にも厚く、時光の将来を気に懸けていたし、蒙古襲来後に陳情に来た竹崎季長にも同情的に接していた。

 蒙古襲来後、勢力争いの結果「霜月騒動」で敗れ、安達泰盛は自害した。



 竹崎季長

 肥後国の御家人であり、二度の蒙古襲来において活躍した。実在の人物。

 その際の活躍を絵巻物に残し、謎の旅人の助言によりその絵巻物を「蒙古襲来絵詞」と名付けた。



〇 北方勢力

 エコリアチ

 イシカリの集落の長の息子であり、将来の長と目されている。架空の人物。

 組織力が弱いアイヌの中では指導者に向いた能力を持っており、一番の取りまとめ役であるサケノンクルが不在の場では皆を取り仕切っている。

 幼い頃から交易に携わっていたせいか、自然と共に生きるアイヌとしては珍しく物欲が強く、勝手に黄金を掘り出していた。

 弓が得意であり、連絡用にフクロウを飼いならしている。

 なお、エコリアチの名前は、アイヌ語で「宝を集める」である。



 サケノンクル

 ウペペサンケの集落の長であり、蝦夷ヶ島全体のアイヌの戦士を束ねる立場を任されている。架空の人物。

 戦闘力はアイヌの戦士随一の人物であり、また、戦術眼は確かなものがある。

 祖先はアイヌの神話で勇者と語られるているオキクルミであり、サケノンクルの部族ではオキクルミは源義経であると伝えている。

 なお、サケノンクルの名前は、アイヌ語で「酒飲み」である。




 オピポー

 陸奥国の蝦夷であり、時光をアイヌに紹介するために行動を共にしていた。架空の人物。

 山での狩猟生活により磨かれた弓の腕は確かであり、撓気氏とアイヌの交易の仲介もしていたことにより知識も豊富である。また、奥州における金の採掘についても知識があり、様々な面で時光を支えた。

 なお、オピポーの名前は、縄文時代を描いた作品「縄文酋長オピポー」の主人公の名前から拝借している。蝦夷と縄文文化は繋がりがあるだろうという解釈のためだ。また、この作品はノンフィクションである。縄文時代なのにノンフィクションとはどういうこっちゃと思った方も多いと思うが、霊媒師がオピポーの霊を呼び出し、オピポーが語った話をまとめたのが「縄文酋長オピポー」なのでノンフィクションなのである。という訳で、私は小説で縄文人の名前を付けるのに困った時はオピポーの名前を使用している。小説を書く皆様も、縄文人がどんな名前なのか分からず、作品に登場させる時に困る経験があるだろうが、その時はオピポーの名前を使えば問題ない。縄文人本人が言っているのだから間違いないのだ。


 

〇 モンゴル勢力

 プレスター・ジョン

 本名を塔匣刺 (タシアラ)といい、ヨーロッパにおいて東方のキリスト教君主と伝えられているプレスター・ジョンの名前で呼ばれている。名前だけは実在の人物。

 正体は、同じくプレスター・ジョンの名前で呼ばれていたモンゴルの有力族長であるトオリル・ハンの娘と、チンギス・ハーンの長男であるジュチの間に生まれた子の血を引く者であり、状況によってはモンゴル帝国の支配者となってもおかしくない立場の者である。

 弓術、馬術、モンゴル相撲等に優れ、優秀な部下を従えるカリスマ性を持っている。その血筋と合わせればチート級の人物と言える。

 先祖代々信仰してきたキリスト教の繁栄とモンゴル帝国皇帝の地位を奪取するため、モンゴル帝国内のキリスト教徒や旧トオリル・ハン派を集め、北海道の資源を元手にするために侵攻を開始した。そこで予想外の頑強な抵抗に遭い、天災にも祟られたのが彼の運の尽きである。

 なお、書いている途中で彼の勢力自体が気に入ってきたため、当初のラストと変更して勢力を温存しようかとも考えたが、この人物を万全な状態で残しておくと後の歴史に影響を及ぼさない筈がないので、歴史の表舞台からはご退場願った。この作品のコンセプトはあくまで歴史の裏でこんなことがあったかもしれないというものなのだ。



 ミハイル

 ノヴゴロド出身の騎士であり、プレスター・ジョンの下で騎士団を率いる。架空の人物。

 十字軍の戦いやノヴゴロド公国とドイツ騎士団が戦った氷上の戦いなど、その長い戦歴であらゆる環境で戦い続けてきた老騎士であり、その戦技、戦術眼はこの作品随一である。主人公の時光は最後まで直接対決でミハイルに勝利していない。

 また、非常に高潔な騎士であり、彼の騎士道精神は本物である。

 彼が鍛え上げた騎士団は、モンゴルに征服された地域の孤児ばかりであり、血筋的には偽物ばかりである。だが、その実力や精神はミハイルの薫陶を受けているため本物である。

 義理の娘のガウリイルも同じく戦災孤児を育てた者であるが、実の娘の様に可愛がっている。

 ミハイルの名前は四大天使からとられた称号の様なものである。



 ガウリイル

 東ヨーロッパ出身の騎士であり、プレスター・ジョンの下で騎士団を率いている。架空の人物。

 この作品唯一の名前のある女性であり、彼女が登場するまでこの作品は男塾の様な有様であった。一応この作品のヒロインのつもりである。

 もっとも、基本的にチェインメイルとバケツヘルムで武装しており、途中までは主人公と完全に敵対し、会うなり殺そうとしかしていなかったためそれほど雰囲気に影響は与えていない。

 基本戦術はランスチャージであるが、生粋の騎士でないためかクロスボウ等を柔軟に使いこなす事もする。

 最終的にプレスター・ジョンの下から離れて旅立った様だ。

 ガウリイルの名前は四大天使からとられた称号の様なものである。


 ウリエル

 南宋出身の武将であり、プレスター・ジョンの下で漢人の部隊を率いている。架空の人物。

 漢人の士大夫階層出身であるが、先祖代々信仰してきたキリスト教の繁栄のため、プレスター・ジョンの下に馳せ参じた。

 古今の様々な知識に精通しており、兵法もその一つである。かれの戦略はプレスター・ジョンの活動方針に大きな影響を与えていた。

 兵法に通じているため彼の立案する作戦は基本的には正しいのだが、生粋の武人でないため時として机上の空論に近いものも思いついてしまう。通常であれば生粋の武人であるミハイルやイスラフィールが修正するのであるが、単独行動した際には助言できるものがいない。それが彼の命取りとなった。

 ウリエルの名前は四大天使からとられた称号の様なものであり、本名は劉学崇である。



 イスラフィール

 イスラム教ニザール派の暗殺者であり、プレスター・ジョンの下で護衛や諜報活動をしている。架空の人物。

 モンゴル帝国に滅ぼされたイスラム教ニザール派を再興させるべくプレスター・ジョンの下で働いており、それは北海道で入手した黄金を持ち帰れば叶うはずであった。

 幼い頃から暗殺者として厳しい訓練を受けて育ったため、あらゆる戦闘技術に通じており、個人としては作中最強である。

 イスラフィールの名前は四大天使のイスラム教での読み方からとられた称号の様なものである。


 アラムダル

 モンゴル帝国の軍人であり、最初はフビライの派遣した樺太方面軍の副指揮官をしていた。架空の人物。

 モンゴル人の中でも非主流派出身であるが、その実力から出世を重ねて行き、それなりの地位に辿り着いた。

 だが、樺太の戦いでアイヌを追い詰めたものの、アイヌに味方した時光のせいで敗北し、その際敵に捕まった上官を射殺した責任を逃れるためにプレスター・ジョンの配下になった。

 


〇 ヨーロッパ勢力

 グリエルモ

 ドミニコ会の修道士であり、見聞を広めるために北海道を訪れ、そこで出会った時光と行動を共にした。架空の人物であるが、東方見聞録の中に記述のある人物でもある。

 見聞を広めるためにモンゴル帝国を旅していた所、ヴェネツィア出身の商人であるポーロ兄弟と出会い、彼らが目指すという海の向こうの島国を訪れる事になった。

 学識豊かな人物で、西洋やモンゴル帝国の様々な知識に関して時光に教えた。

 基本的には博愛精神の持ち主であり、善良な人物である。時折異教徒や異端者に対して狂信者的な発言をするが、現実世界で魔女狩りや異端審問官をやっている者達と比べれば極めて穏当である。武器はモーニングスター。

 彼の名前は東方見聞録の作中に出てきており、マルコ=ポーロ達と共にフビライの下に行くため教皇から派遣されたのだが、旅の途中で戦乱を恐れて逃亡したとされている。ただし、信仰心が矢鱈篤いドミニコ会の修道士が戦乱程度にビビッて逃げ出すわけがないし、他の資料に記述も無いので架空の人物であるというのが学術的な研究成果である。

 なお、彼の名前を平仮名で検索すると、漫画家の事ばかりヒットする。検索汚染が起きているようだ。




 ニコーロ=ポーロ

 ヴェネツィア出身の商人であり、北海道で時光と出会い、一時行動を共にした。実在の人物。

 実際はプレスター・ジョンとフビライ・ハンの両方に仕える二重スパイの様なものであり、東方でヴェネツィアの商業的利益を拡大するために活動していた。



 マフェオ=ポーロ

 ヴェネツィア出身の商人であり、兄のニコーロと行動を共にしている。実在の人物。

 「北海道に現れたヨーロッパの商人」という属性は、兄のニコーロが持っているために影が薄く、作中ほとんどセリフが無い。じゃあ何でこいつを登場させたんだよという話になるが、それは彼が史実でニコーロと常に行動しているからというそれだけの理由である。もう少し個性を出してやればよかったと反省しています。




 マルコ=ポーロ

 ヴェネツィア出身の商人であり、父親のニコーロに連れられて東方にやって来た。実在の人物。

 後に東方見聞録を残す冒険家であるが、東方見聞録の中にある実際とは違う奇妙な記述——フビライの日本遠征の時期のずれ、回回砲の作成者の相違等——は歴史の表舞台から消えた時光とプレスター・ジョンの戦いを記しているため、というのが本作品のコンセプトの一つである。

 まだ若いためかお調子者な部分があり、どこかで聞きかじった与太話を口にし、関係者にそれを記録するなと釘を刺される場面が何度かある。結局東方見聞録には与太話が記述されているのだが、それは東方見聞録はマルコ=ポーロが語った内容を別の人物が筆記した作品であるため、マルコ=ポーロにとっては自分が記述していないから構わないという判断である。

 東方見聞録は読み物として面白いので、是非お勧めします。

【その他】
 竜の顎
 作中では主人公が古代の怪物が封印されていると勘違いしましたが、単なる中生代の生物の化石で、エゾミカサリュウというモササウルスの仲間です。

 震天雷
 所謂()()()()で、火薬で破片をまき散らして殺傷し、音や光で相手を威圧する。黒色火薬でありまだ爆薬とは言えないため、それ程威力は無かったといわれているが、作中の様に大量に集めれば途轍もない威力で敵を爆殺出来るのかはやった人がいないので不明です。

 回回砲試作機
 トレビシュットと呼ばれる最新式の投石器で、作中から少し後になって南宋の堅城である襄陽を陥落させた立役者です。この時イスラム教徒のアラーウッディーンとイスマイルという二人の技術者がこれを作成したと歴史書には記されています。
 ただし、マルコ=ポーロの東方見聞録ではこれを作成したのは、マルコ=ポーロの父親が連れて来たネストリウス派のキリスト教徒であったと記述してあり、手柄を自分の物にしています。
 そして、「回回砲」でグーグル検索をしたら、私のこの作品の「第43話「回回砲試作機」」が結構上位に表示されています。れっきとした歴史上の兵器なのですが、検索汚染をしてしまいました。申し訳ございません。
 実際はあまり気にしていませんが。
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