第10話

文字数 639文字

(そうですよね。こんな不思議な人なら私の人生を救ってくれるかもしれない。今まで独りで暮らしていたけれども、もう男たちに言い寄られるのはまっぴらなのよ。お金はあるわ。でも、それだけじゃない。モートなら何でも知っていそうだし、いつも助けてくれそうだし。……顔もいいし……。)
 アリスは遠い国からの犯罪が年々、ここホワイト・シティに流れ込んでいることも知っていた。実際、藁にも縋る気持ちだった。この街で一番に狙われやすいんじゃないかと思った日も……何度もある。
 だからアリスはモートに靡いた。
 相手が何ものかはさっぱりわからない。けれども、これだけは言える。モートはとても良い人だ。と……。
 
Voice 5

モートは考えた。こうすることで、アリスは犯罪に巻き込まれることもなくなるだろう。
 後の4人の男たちは、真っ青な顔で仰天し、黒い服のモートを見つめていた。何かの手品か魔術師とでも思っているのかも知れない。
 モートは、髪の毛が真っ白になりそうなほど青ざめた顔のヘイグランドの手を放した。ポリポリと鼻を掻く。この男の魂は黒。
 だが、何が起きているのかさっぱりわからないところがあった。考えてもわからない。アリスは何を言っているのだろう? 恋人って誰と誰がだ?
 モートは途方に暮れ、窓の外の雪を眺めた。自分の盲目の人生は、更に暗く静かな無音な道になりそうだった。だが、一筋の光。モート自身もわからない光が自分の空の心を照らしていた。ただ、この場にいることが、不思議な気持ちにさせていた。
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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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