第9話

文字数 836文字

Voice 4

 アリス・ムーアは頭を抱えて考えた。こうなってしまったのは、最初の一通の便箋からだった。遠い国から次々と求婚者がやってきた。
 リステル、ヘイトマ―、ジョン、シルバー、それとヘイグランド。そのどちらが先だったのかはわからない。
 アリスが見る限り、皆お金に困っているが、若くてハンサムで将来有望な人たちだった。その誰かから便箋が来た。きっと、滅多に行かない社交パーティーでアリスを知ったのだろう。知らない男だが五人とも、アリスが社交辞令で「隣国にはとても興味があります。病弱だし静養にも丁度良く。是非、行ってみたい。暮らしてみたいです」というようなことを言ったのが、これだけ大きくなったようだ。便箋には確か「こっちへおいで」のような文章だった。隣国は南に位置していて、ホワイト・シティとは真逆の常夏の国だ。
 病弱だからか、この広大な屋敷で二人だけで暮らしているからか。家族や親族は冗談でもなく誰もいないのだ。皆、血筋で身体が弱かった。 
 溜息を吐いて、シンシンと降る窓からの雪景色をアリスは見つめた。無音に降る雪で心を落ち着かせようとした。だが、アリスは誰が最初だったかを、思い出そうとはしなかった。
 その時。ふと、アリスは部屋の片隅の花瓶にモートの面影を見い出した。それは、モートの顔のようで、こちらを心配そうに見つめている感じがした。
 アリスは「心配しないで」と、無意識に花瓶に向かって優しくウインクをしていた。
 だが、モートの面影はいきなり一人の男に飛び掛かった。 
突然の出来事だった。モートがヘイグランドの右手を締め上げていたのだ。
 モートは外へ男を静かに連れ出そうとしている。
 けれども、アリスはその場面が一斉に崩れ出すことを言うことにした。
「ごめんなさいね……この人が、私の恋人なの……」
 ニッコリと微笑んだアリスはモートの左腕を強い力で引き寄せた……。
 アリスは掴んだモートの左腕を決して離さないことにし、微笑んでは、モートの左手を頬に摺り寄せた。
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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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