第18話

文字数 747文字

「いやはや、母と賭けをしていました。母はモート君が赤ん坊を助けると賭け。私は反対のモート君は赤ん坊を助けないか、あるいは助けられないに賭けました。ちょっと、ズルをしてしまいましたが。私は元々、赤い魂のことを知っていたのです。早くに助けるつもりでしたが……言っておきますが、命には別状はありませんよ。赤ん坊の真っ赤な顔は、ただの熱さによる怒りの表れです」

 オーゼムはそういうと、モートの顔を覗くように見つめた。
 モートはひどく驚いていたが。それより、赤い魂って一体何なのでしょう? 何が見えるのでしょう? 

 アリスはオーゼムとモートの間に、入れない空間のようなものがあることを知った。決して今の二人の間には入れないのだ。オーゼムはニッコリ笑い。「ほう」と溜息を吐いた。

「モート君はただの善意のみで赤ん坊を救いましたね。これでいいんです」
 アリスは困惑して首を傾げてしまった。

「え? ただの善意? ですか……?! そんなことはありません! 素晴らしい優しさですよ! 私はこの目で見ました」

 アリスはモートの良心をどうしても信じたいと思った。

「いや……これは……言っていいのかな? モート君?」

 オーゼムはひどく困った顔で、モートを見たが特にモートは気にしていなかった。

「モート君には、感情がありません。あなたには凄く酷な事ですが……勿論、恋愛感情もないのです。でも、モート君はあなたの声が何よりも一番好きなのですよ」

 シンシンと降る雪が窓際から覗ける。そこを、ほんの少し覗けば、この街が何よりも美しいといえる夜だった。真っ白い月が地上に真っ白な雪を振り撒き、今夜は冷え込みが激しいとアリスは思った。
 アリスはそんなモートを不憫でならないと思ったが、絶対にモートには善意以外があると信じることにした。
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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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