第57話
文字数 675文字
Envy 6
「あ、私はここで。出会うわけにはいきませんので……」
オーゼムはそう言うと、奥の部屋へと身を隠した。
「ちょっと……。オーゼムさん?」
ヘレンはロウソクの明かりで、姿が奥の部屋へと瞬時に消えたオーゼムの方を照らした。仄かな明かりで見える奥の部屋の壁には、やはり絶滅種の剥製がズラリと並んであった。
なんだか不気味に思えてヘレンはオーゼムの名をまた呼んだ。
シンと静まり返った部屋からオーゼムの感激な声が聞こえてきた。
「おお! これは高そうですね! 一体いくらになるのでしょう?」
ヘレンはオーゼムのことを諦めた。
ヘレンは数十分前に勇気を出して、再度ジョンとの面会を女中頭に告げたのだった。ヘレンのための野菜や肉の盛られた食器を持った女中頭はまったく無表情だったが、あっさりと頷いた。ヘレンが元気を取り戻したことにも何も反応をしなかった。
今は何時だろうか?
ヘレンは考えた。
ここへ来てからは、時間を知らなかった。
腕時計は持っていない。
腕時計を持つこと自体。のんびりとしたヒルズタウンでは珍しいのだ。
部屋の中央からの呼び声に応え、ヘレンは大部屋に足を踏み入れた。
数人の女中に連れられ再び現れたジョンの顔には、憂いが感じ取られたが……。
何かがズレている。
ジョンは笑っていたのだ。
ヘレンはそのジョンの不気味な笑顔に戦慄を覚え震え出した。
Envy 7
モートはジョンの屋敷の外観を眺めた。
白い月の明かりによって僅かに照らされる。薄暗い針葉樹の間に挟まる青煉瓦の屋敷は、部屋の数こそ多いが、全体的にこじんまりとした屋敷だった。
「あ、私はここで。出会うわけにはいきませんので……」
オーゼムはそう言うと、奥の部屋へと身を隠した。
「ちょっと……。オーゼムさん?」
ヘレンはロウソクの明かりで、姿が奥の部屋へと瞬時に消えたオーゼムの方を照らした。仄かな明かりで見える奥の部屋の壁には、やはり絶滅種の剥製がズラリと並んであった。
なんだか不気味に思えてヘレンはオーゼムの名をまた呼んだ。
シンと静まり返った部屋からオーゼムの感激な声が聞こえてきた。
「おお! これは高そうですね! 一体いくらになるのでしょう?」
ヘレンはオーゼムのことを諦めた。
ヘレンは数十分前に勇気を出して、再度ジョンとの面会を女中頭に告げたのだった。ヘレンのための野菜や肉の盛られた食器を持った女中頭はまったく無表情だったが、あっさりと頷いた。ヘレンが元気を取り戻したことにも何も反応をしなかった。
今は何時だろうか?
ヘレンは考えた。
ここへ来てからは、時間を知らなかった。
腕時計は持っていない。
腕時計を持つこと自体。のんびりとしたヒルズタウンでは珍しいのだ。
部屋の中央からの呼び声に応え、ヘレンは大部屋に足を踏み入れた。
数人の女中に連れられ再び現れたジョンの顔には、憂いが感じ取られたが……。
何かがズレている。
ジョンは笑っていたのだ。
ヘレンはそのジョンの不気味な笑顔に戦慄を覚え震え出した。
Envy 7
モートはジョンの屋敷の外観を眺めた。
白い月の明かりによって僅かに照らされる。薄暗い針葉樹の間に挟まる青煉瓦の屋敷は、部屋の数こそ多いが、全体的にこじんまりとした屋敷だった。