第54話
文字数 887文字
「終焉? 死滅? オーゼムさん? 何を言っているんですか?」
「この話はまだ、ヘレンさんには言っていませんでしたね……」
そこで、オーゼムは世界の終末の話、自分が天使だということを告げた。
オーゼムの熱意によって、そして、誠意のある説得力がヘレンにあるビジョンを浮かばせた。
それは、あの……青い炎の暖炉だった。
Envy 4
「どう? 美味しい?」
アリスはワイングラス越しにモートに優しく囁いた。周囲の人々も食事の会話でも静かだった。
「……ああ……」
「ああ……良かった。ここは私にとってとても大切な思い出の場所なのです」
外の銀世界はこの上なく大雪が舞い。いそいそと過ぎ去る防寒具に身を包んだ街の人々もあまり見かけなくなってきていた。
昼間の12時半だというのに、空は薄暗く。寒さもこの上なかった。だが、針葉樹に囲まれたここレストラン「ビルド」だけは大きな薪の暖炉とアリスからのモートへの気配りで心温まるひと時だった。
暖炉の明かりに照らされたモートの顔は、時折何か言いたそうだった。アリスは、この後のことは、昼食のあとで決めると言った。モートは久しぶりに食べ物の味を堪能しているといった顔だった。
薪のはじける音以外は、人々の会話も少なく。
アリスはこの席が一番好きだった。
窓際で、暖かい暖炉の近くをいつも取っていた。壁沿いには、ここホワイト・シティでは珍しい真っ赤な薔薇の花が咲いていた。
不意に、モートが窓の外を覗いた。
アリスはそんなモートの美しい横顔をいつまでも見つめていたいと心の底から思った。
だが、……パンッ!
突然、何かの破裂した音が窓の外からした。
レストラン「ビルド」の窓ガラスが一枚割れ、モートの座る席の床に銃による弾丸のような跡ができたのを、アリスは目撃した。
アリスはひどい眩暈がした。
心配して穿かれた大きな穴から視線を戻してモートの身体を見ると、シュッとモートが右手で胸の辺りで線を引くような素振りをしていた。
「大丈夫だ……。もう、片付いた」
モートは平然として静かな声で話している。
アリスは不思議がったが、自然と安堵の息を吐いていた。
「この話はまだ、ヘレンさんには言っていませんでしたね……」
そこで、オーゼムは世界の終末の話、自分が天使だということを告げた。
オーゼムの熱意によって、そして、誠意のある説得力がヘレンにあるビジョンを浮かばせた。
それは、あの……青い炎の暖炉だった。
Envy 4
「どう? 美味しい?」
アリスはワイングラス越しにモートに優しく囁いた。周囲の人々も食事の会話でも静かだった。
「……ああ……」
「ああ……良かった。ここは私にとってとても大切な思い出の場所なのです」
外の銀世界はこの上なく大雪が舞い。いそいそと過ぎ去る防寒具に身を包んだ街の人々もあまり見かけなくなってきていた。
昼間の12時半だというのに、空は薄暗く。寒さもこの上なかった。だが、針葉樹に囲まれたここレストラン「ビルド」だけは大きな薪の暖炉とアリスからのモートへの気配りで心温まるひと時だった。
暖炉の明かりに照らされたモートの顔は、時折何か言いたそうだった。アリスは、この後のことは、昼食のあとで決めると言った。モートは久しぶりに食べ物の味を堪能しているといった顔だった。
薪のはじける音以外は、人々の会話も少なく。
アリスはこの席が一番好きだった。
窓際で、暖かい暖炉の近くをいつも取っていた。壁沿いには、ここホワイト・シティでは珍しい真っ赤な薔薇の花が咲いていた。
不意に、モートが窓の外を覗いた。
アリスはそんなモートの美しい横顔をいつまでも見つめていたいと心の底から思った。
だが、……パンッ!
突然、何かの破裂した音が窓の外からした。
レストラン「ビルド」の窓ガラスが一枚割れ、モートの座る席の床に銃による弾丸のような跡ができたのを、アリスは目撃した。
アリスはひどい眩暈がした。
心配して穿かれた大きな穴から視線を戻してモートの身体を見ると、シュッとモートが右手で胸の辺りで線を引くような素振りをしていた。
「大丈夫だ……。もう、片付いた」
モートは平然として静かな声で話している。
アリスは不思議がったが、自然と安堵の息を吐いていた。