第34話

文字数 920文字

「グリーンピース・アンド・スコーンって言ったら、ここ最近は店の売り上げがめっぽう大きくなったって噂を聞いたぜ」
「ああ。今度、俺も立ち寄ってみようかな」
 ヘレンはその時。何とも言えない奇妙な感覚に襲われた。けれども、気にしないことにした。
 数分後には、バスに揺られているうちに、その感覚を完全に忘れてしまっていた。
 道中、バスがエンストを六回ほどしてヘレンがうんざりしていると、商店街の中にある「グリンピース・アンド・スコーン」の大きなお店が見えて来た。バスの停留所からヘレンは降りると、商店街の空を覆う天幕に助けられて、乾いたパンプスを鳴らしながら、人混みの中で店まで歩いて行った。
 今の時間帯は商店街は人が疎らで、天幕にたまに覗ける穴からは、空には白い月が見え隠れしていた。
 時計を見ると18時だった。
 ヘレンはモートの狩りの日は、いつも白い月が空に浮かぶことを思い出し。心強く思った。「グリーンピース・アンド・スコーン」の正面ドアを開けると、店の人は誰もが陽気な歌を歌うかのような明るい男たちだった。
 こんな時間でもレジに並ぶ人々が大勢いる。
 ヘレンは店の一人に尋ねた。
 ジョン・ムーアから聞いた男の名を……。

 Greed 3

19時30分。

 モートとオーゼムは閉店時間を30分過ぎた「グリーンピース・アンド・スコーン」の店の前にいた。空は美しい白い月が天幕の隙間から輝きを増していた。 
「狩りの時間だ……」
 モートはそう叫ぶと、隣のオーゼムを置いて店に走り出した。
 
Greed 4

「誰の差し金だ!」
 ヘレンは銃を持った男たちによって、地下のパン粉が床に広がった一室で拘束されていた。身動きができないほど、多くの銃が向けられていた。
 その中にはリボルバーやトンプソンマシンガンなどもある。
「知らないわ! ただ、私はグリモワールを図書館へ返してほしいだけなの! 落ち着いて! 本の行方と共にジョン・ムーアという人から聞いただけなの!」
「ギルズのボスの名を知っている奴は、サツか対抗組織の差し金しかいねえ! 」
 別の一人が吠えた。
「もう撃ってしまおう! その方が早いぜ!」

 ヘレンはただ混乱する心を落ち着けせるようにして、ギュッと目を閉じた。

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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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