第8話

文字数 626文字

 だが、五人もの男がアリスの部屋にいて、アリスそっちのけで激しい言い合いをしていた。
 その一人は内ポケットに毒薬を隠しているのを、モートが気が付いた。長期間に渡って、普通の状態からいつの間にか心臓発作を起こすような毒の類だった。けれども、その男の魂は黄色だった。
 何故? 黄色の魂なのだろうか? と、モートは思った。黄色は喜びを表わしている時だ。花瓶のところから、次第にモートは謎を解き明かそうとしていた。
 部屋は徐々に五人の男たちの話し合いが、激しい口論に変わってきていた。アリスは困惑しているようだ。これまで、恐らくは一度もなかった体験だったのだろう。
 最初に結婚を申し込んだのは……誰だ?
 モートは考えた。
 毒薬を隠している男の魂の色が黒に近い灰色になりだした。
 激しい口論の中で、その男が多額の借金の返済に困っている節がでていた。ホワイト・シティでは、借金の返済に困るものには、黒い魂を持つものもいる。そこまでモートは考えた。
アリスが死亡した場合の遺産は莫大な金額だろうし、いずれにしても結婚後は借金の返済に困ることはないだろう。
 無論、その男が最初にアリスと結婚をすると言いだせば、他の男も黙ってはいなかったのだろう。黄色の魂はアリスと結婚できるんだという。一時だけの安堵感からくるものだったのだろう。毒薬の用途は違う使い道にも応用できるのかも知れない。いずれにしても、魂の色は罪を表わす黒に近いのだ。

 そこまで考えたモートだったが……。
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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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