第11話

文字数 733文字

翌日。

 朝日が久しぶりに昇ったホワイト・シティで、モートはアリスと共に大学へと登校していた。アリスの屋敷からノブレス・オブリージュ美術館はかなり遠い。だが、聖パッセンジャーピジョン大学はクリフタウンにあるから、ヒルズタウンからは更に数十ブロックもあって、もっと遠かった。
 そのため、アリスは少しだけ早起きして、ノブレス・オブリージュ美術館行きの路面バスへと乗ったようだ。
 あの夜は、モートをアリスは手品師だと言って、見事に5人を煙に巻いた。
 5人とも突然に現れた不可思議な男のモートを恐れてもいたが、何も言わずに遠い国へと帰って行った。
 その日は、まったく収穫のない日だった。
 モートは毒薬を密かに捨て、黒い魂である罪人を狩ることをしなかった。モート自身、自然に自分が変わっていることが信じられなかった。
 狩らない日は、今までまったくと言っていいほどなかったのだ。
 ヘイグランドは改心し、借金返済後は新しい事業を立ち上げ真面目に働くんだと言いだした。
「ねえ、モート。いつもノブレス・オブリージュ美術館にいるようだけど、あそこに住んでるの?」
「……」
「ねえ、モート。ヘレンさんがあなたのお母様?」
「……」
「あら? モート。聖パッセンジャーピジョン大学に白鳩の群れが飛んでいったわ」
「……」
「モートのお父様って、どんな人?」
「……」

 アリスの今日はとても機嫌が良かったようで、モートはアリスの声全てに耳を傾けていた。
 自分の何が変わったのだろう。モートには永遠にわからないことだった。ただ、アリスの声が大好きな音楽や音よりも自分にとって大切で親近感の湧くものだった。
 これからの狩りは、モートだけの狩りではなくなった。二人での狩りだ。そんな思考がモートの頭を占めだした。


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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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