第55話
文字数 1,024文字
外からヒュウヒュウと鳴る割れた窓からの風の音と共に、通行人の鋭い悲鳴も聞こえてきた。店内は割れた窓ガラスからの冷たい空気で、氷のような寒さが包み始めた。だが、アリスは寒さ以外の恐怖から白い息を吐いていた。
「……モート……さっきの破裂音は?」
「……ああ。三人だったよ」
「?」
「いや、一人は起きたようだ。……何人かは人じゃないな。……今度は大勢で来てくれた」
モートは珍しく喜んだ声を上げた。
アリスは首を傾げながら、外の様子を席から恐る恐る見てみると、向かいの建物の上から何かが落ちてきている。それは、かなりの重さのある人間の身体の一部だった。アリスはそれが首なのではと思えてきた。
外からなのか、得体の知れない寒さから店内の空気が全て凍る。けれども、更に急激に店内の気温があり得ないほど一斉に下がり始めた。今まで暖かかったはずのレストラン「ビルド」の店内は、まるで冷凍庫の中の最奥のような寒さになった。
お客の中には、このとてつもない寒さからすぐに逃げ出すように避難するものや、外の悲鳴を聞いて警察へ連絡しようとするものが現れた。慌ただしく帰って行くお客をアリスは見つめていたが、アリスは不思議に思ってもいた。何故なら皆、一人残らず関係ないことを、小声でこぼしていたからだ。
それは「身体が無いみたいだ」「なんだかとても視界が狭い」「目の前が暗くなって前が見えにくい」などの不安の声だった。
モートが「少し待っててくれ」と言い残して席を外すと、同時に辺りの声がパタリとしなくなった。
アリスは一人取り残されている気持になったが。
店内から外の銀世界へと出て行くモートの後ろ姿を眺めていた。
シンシンと降る雪の街からくる容赦のない寒さからアリスは身を守りながら。モートが帰って来るまで待つことにした。
だが、内心アリスは初めてモートがとてつもなく恐ろしくなってきていた。けれども、モートが折角のデートの最中に席を離れたことが同じくらいにとても悲しかった。
アリスはモートの離れた席を見つめ深い溜息を吐いた。
外は相変わらずに、シンと静まり返った大雪の景色だった。それは、アリスの気持ちを更に沈ませる。アリスがせっかくの昼食を諦めようとしたその時。急にまた外が騒がしくなった。
通行人の悲鳴が次々と上がり、車や建物が破壊される音とクラクションのけたたましく鳴る音が木霊し。まるで、突如荒ぶる嵐がここホワイト・シティを襲ってきたかのようだった。
「……モート……さっきの破裂音は?」
「……ああ。三人だったよ」
「?」
「いや、一人は起きたようだ。……何人かは人じゃないな。……今度は大勢で来てくれた」
モートは珍しく喜んだ声を上げた。
アリスは首を傾げながら、外の様子を席から恐る恐る見てみると、向かいの建物の上から何かが落ちてきている。それは、かなりの重さのある人間の身体の一部だった。アリスはそれが首なのではと思えてきた。
外からなのか、得体の知れない寒さから店内の空気が全て凍る。けれども、更に急激に店内の気温があり得ないほど一斉に下がり始めた。今まで暖かかったはずのレストラン「ビルド」の店内は、まるで冷凍庫の中の最奥のような寒さになった。
お客の中には、このとてつもない寒さからすぐに逃げ出すように避難するものや、外の悲鳴を聞いて警察へ連絡しようとするものが現れた。慌ただしく帰って行くお客をアリスは見つめていたが、アリスは不思議に思ってもいた。何故なら皆、一人残らず関係ないことを、小声でこぼしていたからだ。
それは「身体が無いみたいだ」「なんだかとても視界が狭い」「目の前が暗くなって前が見えにくい」などの不安の声だった。
モートが「少し待っててくれ」と言い残して席を外すと、同時に辺りの声がパタリとしなくなった。
アリスは一人取り残されている気持になったが。
店内から外の銀世界へと出て行くモートの後ろ姿を眺めていた。
シンシンと降る雪の街からくる容赦のない寒さからアリスは身を守りながら。モートが帰って来るまで待つことにした。
だが、内心アリスは初めてモートがとてつもなく恐ろしくなってきていた。けれども、モートが折角のデートの最中に席を離れたことが同じくらいにとても悲しかった。
アリスはモートの離れた席を見つめ深い溜息を吐いた。
外は相変わらずに、シンと静まり返った大雪の景色だった。それは、アリスの気持ちを更に沈ませる。アリスがせっかくの昼食を諦めようとしたその時。急にまた外が騒がしくなった。
通行人の悲鳴が次々と上がり、車や建物が破壊される音とクラクションのけたたましく鳴る音が木霊し。まるで、突如荒ぶる嵐がここホワイト・シティを襲ってきたかのようだった。