第89話

文字数 493文字

「さあ、皆さん外へ出ましょうか」
 オーゼムとぼくたちは外へ出ると、昼間の空を覆うほどの粉雪が舞って来ていた。気温もいつも通り下がり始めた。
「オーゼムさんは天界にどうやって帰るのですか?」
 ヘレンの微かな涙声に、オーゼムは微笑んだ。
「あれ? 見えませんか? もう、すでに目の前にあるんですが?」
 
 ぼくらの目の前には巨大な半透明の階段が、いつの間にか現れていた。

「どうでしたか。人の魂は……。おおよそ皆、魂は磨けば磨くほど綺麗になるんです。例え罪人でもね。それでは失礼しますね。さよなら」

 オーゼムはそう言うと半透明の階段を天へと登って行った。

 ぼくの記憶ももうすぐ戻るだろう。
 だって、アリスの声色は……。
「アリスの声は、大好きだった。今でも好きだ。だって、大昔に失ったフィアンセと同じ声色だったから……」
 ぼくは隣にいるアリスの肩を優しく抱いた。
「そう……悲しいですね。でも、私にとっては、とても嬉しいことです」
 アリスは少し悲し気な声色になって、俯いたがすぐに上を向いた。
「一つアリスにお願いがあるんだ。ここで、昔叶わなかったことをしたいんだ」
「ええ、いいですよ。結婚をしましょう」

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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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