第26話 seven deadly sins(七つの大罪)
文字数 835文字
モートの今朝は、アリスが来る時間までに、ノブレス・オブリージュ美術館の正門を押しつぶすかのような、ズッシリとした雪を取り除くという作業をしていた。正門を行き交う人々は、皆、モートに挨拶をしている。
「あ、モート。今日は大変だねー」
通りすがりの煙突掃除屋の男性がモートに声を掛けた。
「ああ。今年始まって以来の大雪だってさ。今朝のサン新聞に載っていたね」
モートはせっせと雪かきをしたり、青銅の正門に固まってしまった氷をスコップで丹念に削ったりしていた。ノブレス・オブリージュ美術館の使用人たちは、女中頭からの号令で、総動員で広い館内の大掃除であった。
道路はすでにアイスバーンとなっていて、交通が滞っていた。流れにつまった車が目立っている。深夜ダイヤモンドダストがここホワイト・シティを襲い。夜に外へ出ることが、自殺行為の夜だった。
生憎。今日はモートは狩りをしなかった。
午前9時過ぎになると路面バスが停まり。アリスが反対側の道路から足早に歩いて来た。珍しくシンクレアと一緒だった。
何故かシンクレアの魂もアリスの魂も赤色だったので、モートは何か起きたのだろうと察して瞬時に険しい顔になった。
勢いよくアリスがモートの肩に抱き着いてきた。
そして、モートの耳元でシンクレアに聞こえないように囁いた。
「あのね、モート。シンクレアの姉弟の一人。ミリーが昨夜に外へ出かけてしまって、そのまま帰ってこなかったのです」
アリスの不安に押しつぶされそうなほどの震える声に、モートは硬直した。
「アリス。今日はぼくは大学を休むよ……じゃあ、シンクレア。昨日借りた教科書を返すのは明日だね」
「え……? あら! モート! それどころじゃないけど……?」
モートはスコップを投げ出して、オーゼムを探しに走り出した。
「あの教科書は今日使うのよー!」
後ろからのシンクレアの叫び声も気にせずに、オーゼムなら何か知っているかも知れないと考えた。時と場合によっては一緒に探してもらうためでもあった。
「あ、モート。今日は大変だねー」
通りすがりの煙突掃除屋の男性がモートに声を掛けた。
「ああ。今年始まって以来の大雪だってさ。今朝のサン新聞に載っていたね」
モートはせっせと雪かきをしたり、青銅の正門に固まってしまった氷をスコップで丹念に削ったりしていた。ノブレス・オブリージュ美術館の使用人たちは、女中頭からの号令で、総動員で広い館内の大掃除であった。
道路はすでにアイスバーンとなっていて、交通が滞っていた。流れにつまった車が目立っている。深夜ダイヤモンドダストがここホワイト・シティを襲い。夜に外へ出ることが、自殺行為の夜だった。
生憎。今日はモートは狩りをしなかった。
午前9時過ぎになると路面バスが停まり。アリスが反対側の道路から足早に歩いて来た。珍しくシンクレアと一緒だった。
何故かシンクレアの魂もアリスの魂も赤色だったので、モートは何か起きたのだろうと察して瞬時に険しい顔になった。
勢いよくアリスがモートの肩に抱き着いてきた。
そして、モートの耳元でシンクレアに聞こえないように囁いた。
「あのね、モート。シンクレアの姉弟の一人。ミリーが昨夜に外へ出かけてしまって、そのまま帰ってこなかったのです」
アリスの不安に押しつぶされそうなほどの震える声に、モートは硬直した。
「アリス。今日はぼくは大学を休むよ……じゃあ、シンクレア。昨日借りた教科書を返すのは明日だね」
「え……? あら! モート! それどころじゃないけど……?」
モートはスコップを投げ出して、オーゼムを探しに走り出した。
「あの教科書は今日使うのよー!」
後ろからのシンクレアの叫び声も気にせずに、オーゼムなら何か知っているかも知れないと考えた。時と場合によっては一緒に探してもらうためでもあった。