第45話
文字数 1,704文字
アリスは仕方がないので、楽しい昼食を途中で諦めた。
「やあ、アリスさん」
アリスがナイフとフォークを置いて振り向いてみると、その声の主はオーゼムだった。オーゼムは至って自然な態度でアリスの傍のテーブルに着いた。アリスはどうしても聞いてみたかったことをオーゼムに聞くことにした。それはモートの一連の行動だった。矛盾しているが、オーゼムなら必ず助けてくれると信じているが。やはり、モートのことが心配だった。
「オーゼムさん。モートは最近、よくどこかへと行っています。モートに聞いても何も話してもくれないし、何故かとても危険なことをしているような感じがします。何日も大学を休みがちになったり、モートは何をしているのでしょうか?」
オーゼムはニッコリ笑って、通り過ぎるウエイターに羊肉のソテーのデラックスを頼んだ。
「えーと、これは言っていいのかな? でも、やがてあなたも知ることになるでしょう。それは、あなただけではなく。この街全体の人々が知ることになりますが……。私は嘘は言えませんので、例え話になりますが。ある賭けをモート君としています。それは大きな賭けです。勿論、世界の終末を回避するためです。モート君はその賭けのために色々と大変なことをしているのですよ。前に話しましたね。七つの大罪の罪人を狩る話を。それらがあなたの中でいずれ答えを導いてくれますよ」
アリスはオーゼムの誠実さに負け。今は何も知らなくても、それでいいんだと思った。窓の外からは相変わらず。蝿の羽音がしているが、徐々に羽音自体が大きくなってきていた。
「お連れの方とアリスさん。蝿が気になって仕方がないといった顔ですね。大丈夫。モート君に賭けましょう」
Gluttony 7
モートは考えた。オーゼムはこの疫病を扱う蝿の中で、普通に行動ができるのは犯人か自分だけだと。
つまりは、簡単だった。
このホテルの中か、あるいはホテルの近くで普通に行動している人間が犯人だ。
蝿の羽音は今ではホテルから外でも聞こえている。このままではホワイト・シティ全体に蝿が蔓延してしまうだろう。あるいは、すでにそうなっているのかも知れない。オーゼムが何故、モートがグランド・クレセント・ホテルにいるのを知ったのか? 503号室に電話したのは?
そこに、この暴食のグリモワールの犯人がかかっている。
ホテルの外が騒がしくなり、やがて、悲鳴が木霊し……そして、静かになった。
そこで、モートはこのグランド・クレセント・ホテルの屋上を目指した。30階にある屋上へはエレベーターを使った。エレベーター内にも蝿が充満し、隅に置いてある華奢な花瓶に集中している。
モートは気にせず。最上階のボタンを押した。
エレベーターが上昇している最中、モートは一連の出来事を考えた。
考えて整理した出来事の中で、もっとも高い可能性は犯人は屋上にいるということだった。まず、オーゼムは恐らくかなり遠い場所でも魂を見ることができる。そして、ここグランド・クレセント・ホテルの五階にいるモート自身の魂も見ることができた。
恐らくはモートの魂は黒ではないのだろう。
そして、グランド・クレセント・ホテル内や近辺には黒い魂はない。
だから、遠いところが見えるオーゼムでも見えなかったはずの屋上しかないと考えた。
屋上には、かなり痩せている体格で貧相な男たちが大雪の中で寒そうに、大勢の宿泊客から盗んだありとあらゆる高級そうな食べ物を大袋へと入れていた。大袋は地面に散乱し、食べ物に手を付けているものもいる。
魂の色は全て黒。
どうやら、貧困層のものたちのようだ。仕事ができず。一度も食べたときがない高級料理に目をつけたのだろう。
それも、大勢の死の上で。
強欲では多くの犠牲に成り立つ金銭欲。
ここでの暴食は、働かない者の何らかの犠牲を伴う贅沢な食欲。
モートは早速、一人のガリ痩せの男の持つ暴食のグリモワールを刈った。
その後は、次々と抵抗する男たちの首を狩り始める。
全ての首が屋上から真下のコンクリートまで落ちる頃には、辺りはずっしりとした大雪が降り雪の上には真っ赤になった血が広がった。
「やあ、アリスさん」
アリスがナイフとフォークを置いて振り向いてみると、その声の主はオーゼムだった。オーゼムは至って自然な態度でアリスの傍のテーブルに着いた。アリスはどうしても聞いてみたかったことをオーゼムに聞くことにした。それはモートの一連の行動だった。矛盾しているが、オーゼムなら必ず助けてくれると信じているが。やはり、モートのことが心配だった。
「オーゼムさん。モートは最近、よくどこかへと行っています。モートに聞いても何も話してもくれないし、何故かとても危険なことをしているような感じがします。何日も大学を休みがちになったり、モートは何をしているのでしょうか?」
オーゼムはニッコリ笑って、通り過ぎるウエイターに羊肉のソテーのデラックスを頼んだ。
「えーと、これは言っていいのかな? でも、やがてあなたも知ることになるでしょう。それは、あなただけではなく。この街全体の人々が知ることになりますが……。私は嘘は言えませんので、例え話になりますが。ある賭けをモート君としています。それは大きな賭けです。勿論、世界の終末を回避するためです。モート君はその賭けのために色々と大変なことをしているのですよ。前に話しましたね。七つの大罪の罪人を狩る話を。それらがあなたの中でいずれ答えを導いてくれますよ」
アリスはオーゼムの誠実さに負け。今は何も知らなくても、それでいいんだと思った。窓の外からは相変わらず。蝿の羽音がしているが、徐々に羽音自体が大きくなってきていた。
「お連れの方とアリスさん。蝿が気になって仕方がないといった顔ですね。大丈夫。モート君に賭けましょう」
Gluttony 7
モートは考えた。オーゼムはこの疫病を扱う蝿の中で、普通に行動ができるのは犯人か自分だけだと。
つまりは、簡単だった。
このホテルの中か、あるいはホテルの近くで普通に行動している人間が犯人だ。
蝿の羽音は今ではホテルから外でも聞こえている。このままではホワイト・シティ全体に蝿が蔓延してしまうだろう。あるいは、すでにそうなっているのかも知れない。オーゼムが何故、モートがグランド・クレセント・ホテルにいるのを知ったのか? 503号室に電話したのは?
そこに、この暴食のグリモワールの犯人がかかっている。
ホテルの外が騒がしくなり、やがて、悲鳴が木霊し……そして、静かになった。
そこで、モートはこのグランド・クレセント・ホテルの屋上を目指した。30階にある屋上へはエレベーターを使った。エレベーター内にも蝿が充満し、隅に置いてある華奢な花瓶に集中している。
モートは気にせず。最上階のボタンを押した。
エレベーターが上昇している最中、モートは一連の出来事を考えた。
考えて整理した出来事の中で、もっとも高い可能性は犯人は屋上にいるということだった。まず、オーゼムは恐らくかなり遠い場所でも魂を見ることができる。そして、ここグランド・クレセント・ホテルの五階にいるモート自身の魂も見ることができた。
恐らくはモートの魂は黒ではないのだろう。
そして、グランド・クレセント・ホテル内や近辺には黒い魂はない。
だから、遠いところが見えるオーゼムでも見えなかったはずの屋上しかないと考えた。
屋上には、かなり痩せている体格で貧相な男たちが大雪の中で寒そうに、大勢の宿泊客から盗んだありとあらゆる高級そうな食べ物を大袋へと入れていた。大袋は地面に散乱し、食べ物に手を付けているものもいる。
魂の色は全て黒。
どうやら、貧困層のものたちのようだ。仕事ができず。一度も食べたときがない高級料理に目をつけたのだろう。
それも、大勢の死の上で。
強欲では多くの犠牲に成り立つ金銭欲。
ここでの暴食は、働かない者の何らかの犠牲を伴う贅沢な食欲。
モートは早速、一人のガリ痩せの男の持つ暴食のグリモワールを刈った。
その後は、次々と抵抗する男たちの首を狩り始める。
全ての首が屋上から真下のコンクリートまで落ちる頃には、辺りはずっしりとした大雪が降り雪の上には真っ赤になった血が広がった。