第72話

文字数 1,182文字

 手放した銀の大鎌は大熊の首を撥ねていく。そして、唸るように回転し、女性の持つグリモワールを真っ二つにした。
 モートは右手の掌を面前に突きだした。
 銀の大鎌が回転しながら戻って来た。
「また、残念ね! すでにあなたの近くにも召喚してあるのよ! これであなたの最後! じゃあね! カッコイイお兄さん!」
 一匹の大熊がモートの立つ傍のマンホール周辺を破壊して飛び出した。大熊の巨大な左手がモートを襲う。
 だが、モートはヒラリと避けた。
 そして、右手でキャッチした銀の大鎌で大熊の首を狩る。
 辺りには勢いよく血が散乱した。
「チッ……!」
「……」
 モートが女性を狩ろうかとしばらく考えていると、女性は後ろを向き。一目散に逃げ出した。
 モートは後を追った。過去のモートは女子供も殺害してしまっていた。凶悪な殺人鬼だった。だが、今はヘレンの言いつけを忠実に守っていた。当然、モートの足の方が速い。すぐに女性に追いつくと、モートは女性の後頭部に目にも止まらぬ手刀を撃ち放った。
 女性を昏倒させる。
「警察が来るまでの間。もし凍死しなければ、君は運が良かったと思うんだ……」
 モートはギルズを追いかけた。
 ドンッ! と、レストラン街の地下から何やら巨大な車が飛び出した。スパイクタイヤの四輪駆動の大型自動車だ。よく見ると、ギルズが乗っている。車は唸り声を上げ猛スピードでセントラル駅方面へと凍てついた道路を走り出した。恐らくは行き先はクリフタウンだろう。
 モートは全速力で追った。
 両脇の景色が瞬時に後方へと流れ、前方からの風は暴風と化す。
 車とモートは並行して走っていた。
 モートは風も氷も関係が無い。
 3ブロック先でモートは車に追いつくと、ギルズが乗った車は更にスピードを上げる。猛スピードの車はセントラル駅への出店や通路の人々、コンクリートの壁などをなぎ倒して、プラットフォーム内へと入った。そのまま階段を登り切り、線路へ降りそのままのスピードで走り出す。 
 急いでモートはセントラル駅内へと壁を通り抜けた。
 線路の車を追いかけるため、モートはセントラル駅から線路に面した煉瓦の壁を通り抜けながら疾走する。
 遥か遠くの次の駅から警笛が鳴り響く。
 前方からこちら方面に電車が走って来た。
 このままではギルズの乗る車と激突し、大勢の死者が出ると車と並行して走るモートは考え、ギルズの乗る車まで急いで飛翔した。車体を通り抜けたモートはギルズをハンドルごと窓から外へと蹴飛ばした。
 車の運転の仕方がわからないので、銀の大鎌で車体を八つ切りにし、バラバラに解体して線路外に車体を放った。モートは線路に降りるとギルズの持つグリモワールを探した。
 モートはもうクリフタウンへと来てしまい。セントラル駅の線路をしばらくヒルズタウンまで歩いて戻ることになった。
 途中、ギルズのグリモワールを拾い。
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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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