第33話

文字数 1,074文字

 モートは感心して、早速狩りに行こうとした。オーゼムがグリーンピース・アンド・スコーンの名前と場所を知っているのなら、同行するまでだ。そこで、ミリーはもう大丈夫だと考え、シンクレアの家まで送ってから、オーゼムとクリフタウンへと向かうことにした。
 16時に、バスの停留所でオーゼムとミリーと立っていると、空からは灰色の粉雪が大雪から一変しパラパラと降り始めていた。辺りは既に薄暗い。人が疎らの路面バスが到着する頃には、三人とも外套が雪によって湿ってきていた。モートはしばらく会っていないが、アリスの声が懐かしく想えた。

Greed 2

 ヘレンの今日は滞在中のホテルからクリフタウンへと足を向けることにした。軽くジョギングをして朝食を取り。聖パッセンジャーピジョン大学付属古代図書館の館長と今日の予定を電話で話し、昼食を取ると地図と荷物を持ち出して部屋に鍵を掛けた。
昨日のジョンの話では、例のグリモワールを借りた人がクリフタウンにいるようだった。その人の仕事は、とあるパン屋だとわかった。
 パン屋の名は「グリーンピース・アンド・スコーン」だ。
 停留所で、エンストをしょっちゅう起こす路面バスには、辟易しているが、ヘレンは早めにクリフタウンへ行きたかった。
 どうしても、忙しい時間帯を避け閉店時間を過ぎる頃を狙いたかった。
 数十ブロックも先のパン屋まで、辛抱しさえすればそれでいいのだ。
 冬物のブーツはパンプスを履いていたことに、すぐに後悔した。
 ホワイト・シティではよくあることだが。
 靴の湿り気が、この上なく気になって来たのだ。
 停留所で少し足踏みして待った。
 七つの大罪の記されたグリモワールとは? グリンピース・アンド・スコーンの誰が持っているのだろう? 危険は無いにこしたことはないが。ヘレンは何故か胸騒ぎが治まらなかった。
 雪を被ったバスがノロノロとウエストタウン方面から走って来た。
 ヘレンは瞬時に、モートの警戒した横顔を思い浮かべたが、頭を軽く振ってしっかりとした足踏みでバスに乗った。
 滞在しているヒルズタウンのホテルからクリフタウンへと行く途中。バスは周囲の車の流れの中。ノロノロと走るので、ヘレンは居眠りしそうになっていた。
 眠気覚ましに何気なく乗客の声に耳を傾ける。
「なあ、前に話したっけ? 俺がいつも行くパン屋で、不思議と早朝にはドアには決まって蜘蛛の糸が張り巡らされているんだよ。何だか、掃除はもっと早くしないとだよなー」
「ああ、確か聞いたな。その話。あそこのパン屋は美味くて評判なんだがな」
 ヘレンの斜め後ろの席からの会話だ。
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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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