第24話

文字数 673文字

wolf and sheep 3

 モートは今まで一度も寝たことがなかった。
 ヘレンが旅に出掛けた後。狩りを終えると、ノブレス・オブリージュ美術館のサロンの質素な椅子に座り。一人でずっと考え事をしていた。
 モートは昨日に七つの大罪と世界の終末のことを初めて知ったので、その事について深く考えていた。
 今は早朝の6時。
 後、2時間くらいでアリスが迎えに来るだろう。 
 天使のオーゼムの言った七つの大罪は、モートにとっては全くの盲点だった。七つの大罪は黒の魂が関与することの根本的な部分だったのだ。
 今日の深夜に狩ったものたちは、長い年月によって、あるものは姦淫。あるものは激怒。あるものは怠惰など皆、魂が黒くなっていたのだ。
 世界の終末は運命なのだろうか? けれども、ここホワイト・シティでは当然受け入れられないが、遠い国からはあらゆる犯罪が流入している。どのみちこの街は滅びる運命だったのだろう。しかし、遠い国にはヘイグランドのような良き若者もいる。世界の終末を避けるには、さすがに世界は広いだろうが、遠い国からの犯罪だけに目を光らせることが肝要だった。実際、今回の狩りの夜には麻薬などの中毒者も大勢いたのだ。
 今ではモートの盲目的な人生は少しは明るくなってきていた。
 考え、いや、方向性が。自分が何を狩ればいいのかという基準が……まるで荒波の航海の中で一つの灯台を見つけたかのように、理解できるようになったのだ。
 
 モートは自然と微笑んでいた。
 しばらく世界の終末や七つの大罪のことを考えていたが、モートはハッとしてポケットの中の懐中時計を見た。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み