第59話

文字数 539文字

 ザンッ、ザンッ、かなり離れた場所で蛇の胴体から瞬間的に血が舞い上がる音がここまで聞こえる。
 ヘレンは離れた場所の首なしの蛇が真っ赤な血をまき散らしながらも、その胴体がモートを襲っていることに、ある種の恐怖と嫌悪感にも似た気持ち悪さも覚えたが、モートの身が危ないように思えてならなかった……。

Envy 9

 今は午後の11時20分。
 アリスはクリフタウンの「グレードキャニオン」から人通りの往来が激しい大通りにでていた。
 アリスはモートとの別れ際に、とにかく人の多いところに居てくれと言われていたのだ。
 モートとの食事の後、アリスは「グレードキャ二オン」に避難する前に、近くの喫茶店に寄り道して使用人の老婆に電話で警告をした。
「猿の頭の人間に注意して!」
 老婆はすぐにこっくりと頷いてくれた。
 真っ白な雪の道を数人のグレードキャリオンの生き残りの子供たちと踏みしめながら、アリスは徐々にその数を増やしてくる猿を避けようと、聖パッセンジャービジョン大学へと向うことにしていた。
 シンクレアも無事でいてほしいとアリスは心の底から願った。
 「グレードキャリオン」はすでに猿の軍勢によって、占領され多くの命が散った。アリスは数人の子供たちと共に店の窓から大雪の降る外へと逃げて来たのだ。
 










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登場人物紹介

モート・A・クリストファー

アリス・ムーア

シンクレア・クリアフィールド

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