第44話
文字数 813文字
「きみは、たぶんモート君だね?」
電話の主はやはりオーゼムだった。
モートは早口でヘレンが倒れたのと、無数の蝿のことを伝えた。
「私は今、クリフタウンの「ビルド」というレストランにいるんだ。だから、手を貸せないけど、それは暴食のベルゼブブのグリモワールだと思う。疫病を扱うんだ。その蝿は。だから、ベルゼブブのグリモワールを刈ってくれないか? ヘレンさんはそれで元通りになるはずだよ。頼んだよ。モート君」
オーゼムも早口で伝えている。
モートと同じく。オーゼムも何らかの可能性だけで行動をしているのだろう。
「さあ、賭けをしよう。モート君。勿論、ヘレンさんの命が助かる方を賭けるんだ!」
モートはオーゼムが何故色々と知ることができたのかは、気にせずに受話器を置くと、急いでグリモワールを持つ犯人を捜しに行った。
Gluttony 6
厨房からか数枚の銀食器の音とナイフとフォークの音以外に、アリスは蝿の羽音が聞こえていた。とても不快に思うと同時に、何故だか奇妙だなと思えてきた。
「ねえ、シンクレア。この店の……たぶん外だと思うんですが、蝿がいるみたいです」
テーブルの真向いのシンクレアも不快な顔を少しだけ表にだしていた。
「そうね。きっと店の外で誰かが踏んづけた腐ったガムがたくさんあるんだわ」
「そう?」
「ええ。ここクリフタウンには、従姉妹のコリンたちがいるんだけど、いつもクリフタウンの子供たちはガムを噛んでは道路に捨てて踏んづけたままだって、よく言っているのよね」
シンクレアの話は友達として、とても楽しいのだが。アリスはそれでも奇妙な感じがぬぐえなかった。窓の外を見てみると、大雪が降り出していた。防寒具を着ている歩行者や車もまったく見当たらない。
「ねえ、一度。この店から出ませんか?」
アリスは思い切って言った。だが、シンクレアは羊肉のソテーと海藻サラダ。クルミのパイと赤ワインとを半分も残していたので、即座に首を振った。
電話の主はやはりオーゼムだった。
モートは早口でヘレンが倒れたのと、無数の蝿のことを伝えた。
「私は今、クリフタウンの「ビルド」というレストランにいるんだ。だから、手を貸せないけど、それは暴食のベルゼブブのグリモワールだと思う。疫病を扱うんだ。その蝿は。だから、ベルゼブブのグリモワールを刈ってくれないか? ヘレンさんはそれで元通りになるはずだよ。頼んだよ。モート君」
オーゼムも早口で伝えている。
モートと同じく。オーゼムも何らかの可能性だけで行動をしているのだろう。
「さあ、賭けをしよう。モート君。勿論、ヘレンさんの命が助かる方を賭けるんだ!」
モートはオーゼムが何故色々と知ることができたのかは、気にせずに受話器を置くと、急いでグリモワールを持つ犯人を捜しに行った。
Gluttony 6
厨房からか数枚の銀食器の音とナイフとフォークの音以外に、アリスは蝿の羽音が聞こえていた。とても不快に思うと同時に、何故だか奇妙だなと思えてきた。
「ねえ、シンクレア。この店の……たぶん外だと思うんですが、蝿がいるみたいです」
テーブルの真向いのシンクレアも不快な顔を少しだけ表にだしていた。
「そうね。きっと店の外で誰かが踏んづけた腐ったガムがたくさんあるんだわ」
「そう?」
「ええ。ここクリフタウンには、従姉妹のコリンたちがいるんだけど、いつもクリフタウンの子供たちはガムを噛んでは道路に捨てて踏んづけたままだって、よく言っているのよね」
シンクレアの話は友達として、とても楽しいのだが。アリスはそれでも奇妙な感じがぬぐえなかった。窓の外を見てみると、大雪が降り出していた。防寒具を着ている歩行者や車もまったく見当たらない。
「ねえ、一度。この店から出ませんか?」
アリスは思い切って言った。だが、シンクレアは羊肉のソテーと海藻サラダ。クルミのパイと赤ワインとを半分も残していたので、即座に首を振った。