第52話
文字数 1,253文字
教授がカリカリと難解な数式を書いているのをごまかすかのように見ながら、アリスはヘレンに相談してみようかと頭の片隅で考えた。
次の日は祝日だった。
奇跡的に晴れとなったホワイト・シティで、アリスは一人でノブレス・オブリージュ美術館へと路面バスで向かった。
アリスの二度目のデートに使用人の老婆は大喜びだったが、まだデートの約束は決まっていない。本当にデートができるかわからない。と言うと、老婆は先を見越しているかのように、満足そうに頷いていた。
結局、アリスはモートと二度目のデートをすることにした。
エンストを一回だけしかしなかった。10時30分着のノブレス・オブリージュ美術館行きのバスが停留所に着くと、アリスは除雪車の行き交う横断歩道を渡り、高価なチケットを買った。
広大な館内でモートを探すことにした。
しばらく人に聞きながら歩いていると、モートは館内の広々としたサロンの一角にある質素な椅子に座っていた。まるで、いつもそこに座っているような妙に座り慣れた感があった。モートはデートの誘いに対して少し考えているようだったが、首を縦に振ってくれた。
「今は黒い魂も見当たらないし、たまにはアリスの声を聞きたい」
そう言って、アリスはモートとクリフタウンの「ビルド」へ向かった。この前の昼食で、モートはここホワイト・シティで評判な羊肉のソテーを食べ損なったので、アリスは気を回したのだ。
アリスは取り分けてお気に入りのレストラン「ビルド」前にあるバスの停留所まで、クリフタウン行きの11時15分の路面バスを使った。
「ビルド」はアリスにとって、通い詰めていた病院で大切な栄養を与え続けてくれた。いわば恩のあるレストランだった。
「あ! そういえばヘレンさんは?!」
不意に気が付いたことが、そのまま声に出ていた。アリスはヘレンに一昨日にノブレス・オブリージュ美術館で出会ったきりだった。オーゼムと大金の賭けをし、それからヘレンはどこかへと一人で行ってしまったのだ。記憶を辿ると、電話が掛かってきて、確か古代図書館のアーネストからの電話で……。それから……。
アリスはバス内で急に不安になりだし、隣に座っているモートに聞いてみた。
「あの。モート……。ヘレンさんは一昨日、一人でジョン・ムーアという人に会いに行ったのです。それからヘレンさんは帰って来たのでしょうか?」
モートは抑揚のない声を発しながら、鼻をポリポリと掻いた。決して関心がないわけではく。ヘレンは安全だという感じだった。
「ああ。ヘレンのところには、正確にはジョン・ムーアの屋敷へはオーゼムが行ったから……恐らくは、オーゼムがついているから安心していいよ。後、ヘレンに聞いてくれるはずだ。何かがわかるだろう……ヘレンから頼まれたあの絵画を探すことは、ぼくは聞きそびれたし、何故、ヘレンがジョン・ムーアにこだわることとかも……ヘレンは心配ないよ」
路面バスはエンストを起こしながら、急に空は灰色が覆い。雪が降り出した道路をクリフタウンへと向かった。
次の日は祝日だった。
奇跡的に晴れとなったホワイト・シティで、アリスは一人でノブレス・オブリージュ美術館へと路面バスで向かった。
アリスの二度目のデートに使用人の老婆は大喜びだったが、まだデートの約束は決まっていない。本当にデートができるかわからない。と言うと、老婆は先を見越しているかのように、満足そうに頷いていた。
結局、アリスはモートと二度目のデートをすることにした。
エンストを一回だけしかしなかった。10時30分着のノブレス・オブリージュ美術館行きのバスが停留所に着くと、アリスは除雪車の行き交う横断歩道を渡り、高価なチケットを買った。
広大な館内でモートを探すことにした。
しばらく人に聞きながら歩いていると、モートは館内の広々としたサロンの一角にある質素な椅子に座っていた。まるで、いつもそこに座っているような妙に座り慣れた感があった。モートはデートの誘いに対して少し考えているようだったが、首を縦に振ってくれた。
「今は黒い魂も見当たらないし、たまにはアリスの声を聞きたい」
そう言って、アリスはモートとクリフタウンの「ビルド」へ向かった。この前の昼食で、モートはここホワイト・シティで評判な羊肉のソテーを食べ損なったので、アリスは気を回したのだ。
アリスは取り分けてお気に入りのレストラン「ビルド」前にあるバスの停留所まで、クリフタウン行きの11時15分の路面バスを使った。
「ビルド」はアリスにとって、通い詰めていた病院で大切な栄養を与え続けてくれた。いわば恩のあるレストランだった。
「あ! そういえばヘレンさんは?!」
不意に気が付いたことが、そのまま声に出ていた。アリスはヘレンに一昨日にノブレス・オブリージュ美術館で出会ったきりだった。オーゼムと大金の賭けをし、それからヘレンはどこかへと一人で行ってしまったのだ。記憶を辿ると、電話が掛かってきて、確か古代図書館のアーネストからの電話で……。それから……。
アリスはバス内で急に不安になりだし、隣に座っているモートに聞いてみた。
「あの。モート……。ヘレンさんは一昨日、一人でジョン・ムーアという人に会いに行ったのです。それからヘレンさんは帰って来たのでしょうか?」
モートは抑揚のない声を発しながら、鼻をポリポリと掻いた。決して関心がないわけではく。ヘレンは安全だという感じだった。
「ああ。ヘレンのところには、正確にはジョン・ムーアの屋敷へはオーゼムが行ったから……恐らくは、オーゼムがついているから安心していいよ。後、ヘレンに聞いてくれるはずだ。何かがわかるだろう……ヘレンから頼まれたあの絵画を探すことは、ぼくは聞きそびれたし、何故、ヘレンがジョン・ムーアにこだわることとかも……ヘレンは心配ないよ」
路面バスはエンストを起こしながら、急に空は灰色が覆い。雪が降り出した道路をクリフタウンへと向かった。