第78話
文字数 1,194文字
幾つも幾つも有名な天井画家による天使の絵や花々が描かれた天井、透き通った透明感のある壁、重厚なカーペットの床を通り抜け、モートは西館と東館の中央まで赤色の魂に向かって走った。老婆の使用人部屋は廊下の端っこにあった。こじんまりとした部屋だった。その部屋のドアの面前に蝙蝠男が数人。パタパタと羽を鳴らし浮遊していた。
モートは素早く近づくと同時に、全ての首を狩った。
鮮血で汚れた銀の大鎌を洗いたくて、老婆のドアをノックした。
「アンネおばあちゃんですね。ここを開けて下さい。お願いします」
老婆が恐る恐るドアを開けると、モートの姿を見て「ヒッ」と短い悲鳴と共に失神した。
「……」
モートは仕方なく。銀の大鎌を洗うのを諦めて、この老婆が立ち直るまで、護衛にここにいることにした。
Pride 9
ヘレンはオーゼムの後ろ姿を追いながら頼りない蝋燭の灯りで、仄暗い廊下を進んでいた。
「オーゼムさん。かなり進んだようですが。目的地はまだなのでしょうか?」
「ええ……。」
「今、ジョンの屋敷のどこらへんかしら?」
「もうすぐ食堂です」
靴底が地面に凍結するほどの凍てついた夜を、ヘレンはオーゼムと夜間バスに乗って、再びジョンの屋敷へと遥々来たのだ。
ここホワイト・シティでは珍しく雪が降らない夜だった。
ヘレンは不思議と無人と化したジョンの屋敷を不気味とはちっとも思わなかった。例えジョンがいても無人の屋敷と大差ないからだ。
廊下の窓の外には、真っ白な月が浮かんでいた。
ヘレンは白い月が浮かんでいることで、心強く思っていると、ドンッとオーゼムの背中に派手に顔をぶつけてしまった。オーゼムが立ち止まったからだ。
「もし、モート君を連れて来たなら……良かったんだ……予想以上に……ここは危ない……」
オーゼムの背中の体温が急激に冷たくなるのをヘレンは体感した。
「ど、どうしたのです?! オーゼムさん?!」
「もう手遅れかも知れませんので、ヘレンさん! 逃げて下さい!!」
オーゼムが急にヘレンの方へ向くと、ドンっと両手でヘレンを後方へと突き飛ばした。突如、前方。オーゼムの後ろからガシャンと何かが割れる音がした。
ヘレンはその音にも恐怖したが、すぐに払拭してオーゼムを置いておくわけにはいかないと思い。オーゼムの右手を前のめりに素早く掴んだ。
「さあ! こっちへ! オーゼムさん!」
ヘレンは立ち上がりながら、オーゼムの右手を握り、食堂と思わしき場所の中へと走った。
ノシノシと重い足音が追ってくる。
ヘレンとオーゼムは食堂のテーブルや椅子に当たり、ひっくり返しながら奥の方へ走った。人間とは思えない叫び声が後ろから上がる。
オーゼムがヘレンの前を走った。
「もうすぐ、庭に続く窓です! 行き止まりです!」
「なんとか逃げないと! ああ、モート……」
重い足音が近づいてくる。
その姿は……ヤギの顔の人間だった。
モートは素早く近づくと同時に、全ての首を狩った。
鮮血で汚れた銀の大鎌を洗いたくて、老婆のドアをノックした。
「アンネおばあちゃんですね。ここを開けて下さい。お願いします」
老婆が恐る恐るドアを開けると、モートの姿を見て「ヒッ」と短い悲鳴と共に失神した。
「……」
モートは仕方なく。銀の大鎌を洗うのを諦めて、この老婆が立ち直るまで、護衛にここにいることにした。
Pride 9
ヘレンはオーゼムの後ろ姿を追いながら頼りない蝋燭の灯りで、仄暗い廊下を進んでいた。
「オーゼムさん。かなり進んだようですが。目的地はまだなのでしょうか?」
「ええ……。」
「今、ジョンの屋敷のどこらへんかしら?」
「もうすぐ食堂です」
靴底が地面に凍結するほどの凍てついた夜を、ヘレンはオーゼムと夜間バスに乗って、再びジョンの屋敷へと遥々来たのだ。
ここホワイト・シティでは珍しく雪が降らない夜だった。
ヘレンは不思議と無人と化したジョンの屋敷を不気味とはちっとも思わなかった。例えジョンがいても無人の屋敷と大差ないからだ。
廊下の窓の外には、真っ白な月が浮かんでいた。
ヘレンは白い月が浮かんでいることで、心強く思っていると、ドンッとオーゼムの背中に派手に顔をぶつけてしまった。オーゼムが立ち止まったからだ。
「もし、モート君を連れて来たなら……良かったんだ……予想以上に……ここは危ない……」
オーゼムの背中の体温が急激に冷たくなるのをヘレンは体感した。
「ど、どうしたのです?! オーゼムさん?!」
「もう手遅れかも知れませんので、ヘレンさん! 逃げて下さい!!」
オーゼムが急にヘレンの方へ向くと、ドンっと両手でヘレンを後方へと突き飛ばした。突如、前方。オーゼムの後ろからガシャンと何かが割れる音がした。
ヘレンはその音にも恐怖したが、すぐに払拭してオーゼムを置いておくわけにはいかないと思い。オーゼムの右手を前のめりに素早く掴んだ。
「さあ! こっちへ! オーゼムさん!」
ヘレンは立ち上がりながら、オーゼムの右手を握り、食堂と思わしき場所の中へと走った。
ノシノシと重い足音が追ってくる。
ヘレンとオーゼムは食堂のテーブルや椅子に当たり、ひっくり返しながら奥の方へ走った。人間とは思えない叫び声が後ろから上がる。
オーゼムがヘレンの前を走った。
「もうすぐ、庭に続く窓です! 行き止まりです!」
「なんとか逃げないと! ああ、モート……」
重い足音が近づいてくる。
その姿は……ヤギの顔の人間だった。