第70話 お持ち帰り

文字数 1,345文字

「よおおっ!ラブ、ユ~、ユウキ~!
 琴音先輩も、こんちは~、じゃなくて、こんばんは~」

って…、美優、酔ってるよね。めっちゃご機嫌じゃん…

「なんか、二人、さっきから話弾んでますよね~?何話してたんですか~?」

って酔っぱらいオヤジ美優の問いに、琴音先輩は、

「コイツが、ドMだって話してたんだ。な?ユウキ…」

って、悪戯っぽい笑みを投げてきた。

「うっ…」

 すると、美優

「コイツ、ドMもドM、もう、見たまんまっすよぅ!
 許してください~、ボク~、これ以上、もうムリ~
 とかって、よく切なそうに喘いでますから!」

 ウ、ウ、ウソ、ウソ、ウソ…
 こらぁ、美優!

「コイツが切なそうに喘ぎ声出してるとこ想像すると、酒進むね!」

「さすが琴音先輩、お目が高い!マジ、逸品ですよ!今度、コイツ、イジメちゃいますかぁ?それもフルコースで!
 お手伝いしますよ~」

「おっ、助かる!じゃ、さっそく、今夜、持って帰ろっかな。」

「いいっすねえ!じゃあ、琴音先輩ん家に、ヒメ、お持ち帰りってことで。
 後でお店の人に包んでもらお!」

「アタシが、縛ったげるよ…」

 で…、こっから先は言えない…
 とても言えない…

 美優も琴音先輩も酔っぱらって、二人めっちゃ盛り上がってた。
 ヒメ、お話の中で、散々な目にあわされてる…
 エッ、そんなことされんの?ってような…
 でも、酔ってるとは言え、美優まで、こんな願望、ヒメに持ってたの???

 このテーブル、喫煙用なのに、やたら賑やかになって、ユウキを独り占めにするのは不公平なんて言われて、ヒメだけ別のテーブルへ移動することになった。
 やっと、解放…
 ま、めっちゃ楽しかったけどね。


 それんしても、琴音先輩、お酒強いなぁ。ずうっと飲み続けてるのに、全然表情変わんないもんね。相変わらずクール。ただ、いつになく笑顔を絶やさないところが可愛い。
 それに引き換え、我らが美優…、大丈夫?
 とっても楽しそうだけど、目、座ってるよ。

 でも、実を言うとね、今日は、美優に一番楽しんでもらいたかったんだ。だから、良かった、めっちゃ楽しんでくれて。
 目、座っちゃってるけど、これは飲み過ぎのせいだよね。でも、たまにはいいんだよ、目いっぱい羽目はずすのも。
 目いっぱい羽目はずして、心底笑って、心底楽しんで。そういう美優見るの、好きだよ。いつもちょっと気が張ってるもんね。


 美優…、あなたとは女性として、親友としてこれからも接していきたいと思います。こないだ、あなたが来てくれた日、夜通し徹夜で語り合い、あなたと約束したように。
 あの晩、あなたの知らない面をいろいろ知ることができました。あなたが泣くのも初めて見ました。"オトコ"としてのユウキは求められていないってことも、痛いほど伝わってきました。

 でも、お陰で踏ん切りがついたよ。浮気者のユウキは、早くも美優ではない、一人の"異性"に夢中なんだ。あなたのお話の中でいつもユウキを押し倒してくるあの人です。
 ユウキはあの人に押し倒されても、あなたを支えられる、そして支えてもらえるような"同性"でありたいと思っています。

 だから、美優、今夜は大丈夫。まだまだ目いっぱい楽しんで。
 後でちゃんと送ってくから。
 ヒメを"お持ち帰り"なんてさせないし。
 もちろん美優もね。
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