第10話 捨てゼリフ
文字数 1,283文字
今回のイベント終了時だけでも、去年の新入部員の数を優に上回る希望者を集めるほどの大盛況だった。一応僕はそれに貢献できたようなので、一安心。シオン先輩も笑顔で寄ってきて、
「ありがとう。良くやってくれたね!」
って褒めてくれた。
やったね!
この後はみんなで打ち上げ。楽しく飲んで騒いでおしまい…
本来ならそうなるはずだった。
でも試練はここからだったんだ。
片付けを終えて外に出ると、たくさんの人たちが待っていた。僕が外に出た瞬間、またしても大きな歓声が起きた。
えっ、僕が目当てなの?
これにはホントにびっくりした。
大勢の人から、一緒に写真を撮らせて下さいとか、握手して下さい、って頼まれた。ちょっと怖いやら気恥ずかしいやら…、自分が突然アイドルの女の子にでもなったような、変な気分だった。
僕はとりあえず笑顔で、ありがとう、なんて言いながら応じていたけれど、本当はどうしていいか分からなかった。
勝手に僕の写真を撮ってる子もいる。
やめてほしいな…
そう思っていると、今度はさっき一緒に撮った女の子たちが、「見て、見て、これ男の子だよ!信じられる?」ってな感じで写メを友だちに転送している。
マジ?って動揺している間もなく、それがあっちでもこっちでも…
なんだろこれ…。みんな僕の何が目当てなの?
僕は…いつも通りの…、こんなちっぽけな僕。
時々聞こえる、可愛い、って言葉が、今はグサグサ胸に突き刺さる。
そんなこんなでどうにかホールを後にできたものの、打ち上げの場所には予定よりかなり遅れて到着する羽目になった。
着くや否や不穏な空気。
何やら揉めている様子。
見るとシオン先輩と杏先輩だった。
どうしたんだろ?
「あれじゃ、誰が主役だか分かんないじゃない!」
その一言で状況は直ぐに分かった。
要するにそういうことなんだ…
「一人前に遅れて来るしさ!」
杏先輩が僕を睨みつけている。
「わたし、帰る!」
そう言って、ツカツカと僕の元に歩み寄って来た。遅れて来たことを謝ろうとすると、杏先輩はそれを制止するかのように、すれ違いざまにある捨てゼリフを吐いていった。
とても短いセリフ…
それは、僕が一番こたえるセリフだった。
杏先輩はそれを言い残すと、高らかに靴音を響かせながら店を出て行った。
またか…
何度も言われたことがある。
この姿だったら、それを言われるのは最初から覚悟…かもしれない。
でも、何度言われても慣れることはできないんだ。
悪意しか宿らない言葉ってこの世には存在する。
こいつは僕をフリーズさせるに十分過ぎるセリフなんだ。
聞こえなかったとは思うけど、美優と憲斗がいち早く状況を掴んで、立ちすくんでいる僕を自分たちのテーブルに連れていってくれた。
僕は朝からずっと、この二人と話できるのを楽しみにしていたんだ。なのに完全に打ち砕かれた気分だった。
僕は膝の上に両手を乗せたまま、やっとの思いでうつむいていた。こないだバイトのお金で買ったお気に入りのブルーのフレアスカートが馬鹿みたいに見えてきた。
ホント…
バカみたい…
思わずそう呟いた。
「ありがとう。良くやってくれたね!」
って褒めてくれた。
やったね!
この後はみんなで打ち上げ。楽しく飲んで騒いでおしまい…
本来ならそうなるはずだった。
でも試練はここからだったんだ。
片付けを終えて外に出ると、たくさんの人たちが待っていた。僕が外に出た瞬間、またしても大きな歓声が起きた。
えっ、僕が目当てなの?
これにはホントにびっくりした。
大勢の人から、一緒に写真を撮らせて下さいとか、握手して下さい、って頼まれた。ちょっと怖いやら気恥ずかしいやら…、自分が突然アイドルの女の子にでもなったような、変な気分だった。
僕はとりあえず笑顔で、ありがとう、なんて言いながら応じていたけれど、本当はどうしていいか分からなかった。
勝手に僕の写真を撮ってる子もいる。
やめてほしいな…
そう思っていると、今度はさっき一緒に撮った女の子たちが、「見て、見て、これ男の子だよ!信じられる?」ってな感じで写メを友だちに転送している。
マジ?って動揺している間もなく、それがあっちでもこっちでも…
なんだろこれ…。みんな僕の何が目当てなの?
僕は…いつも通りの…、こんなちっぽけな僕。
時々聞こえる、可愛い、って言葉が、今はグサグサ胸に突き刺さる。
そんなこんなでどうにかホールを後にできたものの、打ち上げの場所には予定よりかなり遅れて到着する羽目になった。
着くや否や不穏な空気。
何やら揉めている様子。
見るとシオン先輩と杏先輩だった。
どうしたんだろ?
「あれじゃ、誰が主役だか分かんないじゃない!」
その一言で状況は直ぐに分かった。
要するにそういうことなんだ…
「一人前に遅れて来るしさ!」
杏先輩が僕を睨みつけている。
「わたし、帰る!」
そう言って、ツカツカと僕の元に歩み寄って来た。遅れて来たことを謝ろうとすると、杏先輩はそれを制止するかのように、すれ違いざまにある捨てゼリフを吐いていった。
とても短いセリフ…
それは、僕が一番こたえるセリフだった。
杏先輩はそれを言い残すと、高らかに靴音を響かせながら店を出て行った。
またか…
何度も言われたことがある。
この姿だったら、それを言われるのは最初から覚悟…かもしれない。
でも、何度言われても慣れることはできないんだ。
悪意しか宿らない言葉ってこの世には存在する。
こいつは僕をフリーズさせるに十分過ぎるセリフなんだ。
聞こえなかったとは思うけど、美優と憲斗がいち早く状況を掴んで、立ちすくんでいる僕を自分たちのテーブルに連れていってくれた。
僕は朝からずっと、この二人と話できるのを楽しみにしていたんだ。なのに完全に打ち砕かれた気分だった。
僕は膝の上に両手を乗せたまま、やっとの思いでうつむいていた。こないだバイトのお金で買ったお気に入りのブルーのフレアスカートが馬鹿みたいに見えてきた。
ホント…
バカみたい…
思わずそう呟いた。
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