⭐️ 美優との一夜①(ユウキ、一緒に寝ちゃダメ?)

文字数 752文字

 実は今僕は、美優の腕に抱き枕されて寝ているんだ。髪の毛を美優の細い綺麗な指で掻き分けてもらいながら。

 幸せだよ
 でもさ
 何かが変なんだ

「ねえ、美優、どうしたの?」

「ん?何が?」

 美優は指の動きを止め、不思議そうな表情で僕の顔を覗きこんだ。奇麗な瞳が静かに揺れていた。

「あのさ、さっきから少し気になってたんだけど…、美優、何かあったの?」

 美優は僕の目を見つめながら、

「どうして?何も無いよ」

そう言って微笑んだ。でもその微笑みは何処となく沈んでいるように見えた。

「ホント?なら良いんだけどさ…」

美優は僕の目を見つめながら、また髪をゆっくりと撫で始めた。


 ついさっきまでずっと喋りっぱなしだった。よくこんなに話すことがあるなって思うくらい、ずうっと喋り続けていた。喋り疲れたのと笑い疲れたのでようやく、寝よっか、って話になって、ベッドの隣に美優のためにお布団を敷いてあげた。

「おやすみ!消していい?」

電気の紐に手をかけ、その紐を引こうとした瞬間思いとどまった。美優がかすれるような小声で、

「ユウキ、一緒に寝ちゃダメ?」

って聞いてきたんだ。

「えっ…」

 僕は紐に手をかけたまま、驚いて美優の顔を見つめた。
 美優は真顔だった。そして寂しそうな、不安そうな声で、もう一度、

「だめ?」

って聞いてきたんだ。

「う、ううん。もちろん良いよ。」

 僕は慌てて否定した。
 そりゃ、大歓迎だよ。憧れの美優にそんなこと言ってもらえるんだもん。嬉しくないはずないよ。誰だって嬉しいに決まってるよ。

 ただ、僕さ、これでも、一応…
 いや、そういうことじゃないの。僕が驚いたのはね、美優の様子がさっきとまるで違っていたってこと。悲しそう…、なんてもんじゃない。思い詰めたような、切羽詰まったような、そんなギリギリの悲愴感が伝わってきたんだ。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み