第67話 マヌケヅラ

文字数 1,092文字

「ひとつ、聞いていいですか?」

「何?」

「琴音先輩って、女性のからだ…に惹かれるんですか?」

 この雰囲気、なんとなく何聞いても許される感じだったから。それに、お酒入ってるし、お互いにね。

「女のからだ、大好きよ。だって綺麗じゃん。
 私はね、曲線が好きなの。オンナのカラダの持つ曲線がさ。オトコも悪くないんだけど、アタシはオンナの曲線のあの柔らかさが好き。」

「ええ、わたしも大好きです。」

「いろんなオトコの画家がオンナのヌード描きたがるじゃん。あれって体の曲線に惹かれてると思うんだよね。こういう綺麗な曲線持つ生き物、ほかにいないじゃん。
 車のデザインとか、スマホのデザインなんかだってさ、結局無意識にオンナの曲線追っかけてんだよね。アタシも考えることはスケベなオトコたちと一緒。映像造るときもずっとその曲線追っかけてるから」

「へえ、そうなんですね!でも、わたしだってそうですよ。ずっと美優の曲線美、追っかけてます。ボディーラインだけじゃないんです。それよりももっと、美優の動き自体の曲線美というか…」

「うん、分かる!そうなんだよね、あの子さぁ、マジ、綺麗だよねぇ…」

そう言って目を細めながらチラと美優の方に目をやった。

 ん?ちょっと意味深な目。

 美優、楽しそうに同級生たちと盛り上がってる。

 それからまた、ハッと我に帰ったように僕を見つめ直した。

「でも、アンタこそ何よ、その腰といい、ケツといい、二人してクッソエロい体してさぁ」

「えっ、わたしも美優並みのエロさ発してますか?」

「そうよ。あの子とは違う匂いするけど。まあ、あの子の方がずっとまともなエロさだわ。アンタのは調子狂う!
 で、アンタ、これでいったい誰に何したいわけ?」

そう言ってまた僕の腰を思いっきり掴んだ。

「わたしのカラダにも興味あります?」

「ありまくりよ!
 ヘソの奥、舐め回してやりたいわ!」

「えええっ!」

 二人して声上げて笑った。

 そんな僕らの様子を、みんな意外そうな顔して窺っているのが分かる。その視線が、ホロ酔い加減の僕たちにはかえって心地よかったりする。

「ただ、アンタは、やっぱ調子狂うんだよね…
 言い方変だけどさ、アンタ、本物のオンナじゃん。全然わざとらしさや無理が無いんだよ。オンナそのものなんだよ。そのくせ、時々本物の"オトコ"が飛び出てきたりすんの。チワーってな感じでさ」

「チワーって感じですか…」

「そう、マヌケヅラしてさ」

「こんな顔かなあ?」

って、変顔したら、ウケた!
 手叩いてめっちゃウケたから、ちょっとビックリ。こんな琴音先輩、見るの初めてだし。
 ま、やって良かった…

 みんなも琴音先輩の様子に驚いてる。


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