第60話 美優、美味しいの作るから…

文字数 1,282文字

 部屋、ちゃんと掃除しといて良かった。まさか美優が来ると思ってなかったから。
 せっかくだからご飯作ったげよ。
 絶対、お店で食べるより満足してもらえる自信あるし、美優のお陰で、服もお気に入りを見つけられたから。

 ご機嫌でお買いもの済ませると、一緒にスーパーで食材仕入れて、家に戻った。
 よし、今日は美優にご馳走すんだ。



「ユウキ、いっつも綺麗にしてるね。私ん家より、ずっと片付いてるじゃん。それに、良い匂い!さすが野郎どもを夢中にさせるだけのことはあるわ…。これなら憲斗がいつ来ても大丈夫だね。」

「なんでいきなり憲斗よ…」

「憲斗は来たりしないの?」

「うーん、最近あんま来ないかな。たまぁに行くことはあるけどね。」

「押し倒されたりしない?」

 美優は笑ってそんなことを言う。

「んなこと、されるわけ無いじゃん!憲斗、すんごい気い遣ってくれるから、安心してられるよ。」

「ええっ!安心なんかしてちゃダメじゃん。憲斗はきっとドキドキ、ソワソワだよ。
 今度行ったとき、今日買ったスカートちらつかせて誘惑してみな。憲斗、鼻血出して、腿にかぶりついて来るから。“ガブゥ”、って。」

「エエエッ!」

 美優は可笑しそうにゲラゲラ笑った。

「まあ、ユウキが一人でウチなんか来た日にゃ、オスたちゃぁみんな気が気じゃないと思うから、気をつけなよ。」

「僕も、オスなんだけど…」

「ユウキは違うよ。正真正銘、ザ・女の子だわ。スゴい良い意味でね。だから、女の子たちもこの家来たがるでしょ?」

「まあ、確かによく来てくれるね。特に一年女子は毎週のように来てるかな。ひなちゃんなんか、こないだ、ソファに横んなって、パンツ丸出しで寝てたから毛布かけたげた。全然警戒感無しって感じ。」

「ユウキに何警戒すんのよ!めっちゃリラックスできるわ。何だろ、この、ユウキん家の狂気じみたホンワカ感…」

 美優はそう言って部屋を見回した。それからおもむろに立ち上がると、クローゼットの扉に手をかけた。

「ユウキ、勝手に開けて悪いけど、いつものやつ貸してよ。」

「あっ、そうだった!ごめん。一番下の段にあるから、自由に出して使って。」

「うん、ありがとう。」

 そう言い終わるや否や、お気に入りのトレパンを取り出して、さっさと着替え始めた。僕の目の前で。いきなりスカート脱いで…
 足、長ッ!と思った。しかも、美優、Tバック?

「ユウキんちのこいつ、最高だね!下着しか履いてないような着心地!」

 そう言って目の前で笑って立って見せた。
 このトレパン、美優のお気に入り。すんごい気に入ってる様子だから、美優専用に置いてあるんだ。
 それにしても、腰とかお尻のライン、綺麗だなぁ…

 美優は枕元にあるカピバラのぬいぐるみを手にすると、ひなちゃん同様、ソファに寝転がってテレビを見始めた。このカピバラも美優のお気に入り。

「美優、ゆっくりしててね。今ご飯作るから。」

「ありがとう!横んなってて、しかもユウキ姫のディナー食べられるとは、何たる幸せぇ!」

そう言って手を振ってきたので、僕も笑って手を振り返した。

 うん、ホントにゆっくりしてて。
 美味しいの作るから。
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