第48話 妖しいユウキ
文字数 844文字
ポスターできました。
差し当たってのものだけど。
えっ、これホントに僕?
僕って、こんな感じなの?
…ってものが。
「へえ、良い感じに仕上がってる。さすが評判通りのことはあるわね。あなたたち、よくこんな短い時間で、ここまでのモノ作れるわね。」
「いえ、荒井さんの写真のお陰です。」
そう言ったのは、琴音先輩。
そう…
サカキ無き今、映画班で唯一、僕が“僕”って言えない人。
正真正銘、我が道を行くタイプの女性。長い髪をなびかせ、下はタイトなジーンズに、上はシンプルなシャツにジャケット、いつも妙に踵の高い靴履いてる。すんごいスタイル良くて、美人なんだけど、とんでもないヘビースモーカー。だから、外で独り、タバコふかしてることが多い。
そう言えば琴音先輩、スカート履いてるところ、一度も見たこと無いな…
工学部の花形研究室の切れ者で、グラフィックアートやデジタル映像の作成技術では、映画班の中で右に出る者はいない。シオン先輩も映像制作に関しては琴音先輩に全幅の信頼を寄せている。
ただ、あのシオン先輩ですら、彼女については何も語らない。仲が悪い訳でなく、むしろお互い信頼し合っていて、必要なこと以外は一切語らないって感じ。
この二人の関係、ちょっと不思議。
興味ある。
実際、琴音先輩が気を許しているのはシオン先輩だけなんじゃないかな。ほかの人とはほとんど関わろうとしない。僕なんか視界にさえ入っていない気がする。目も合わせてもらえない。
ま、シオン先輩以外、みんな同じこと言ってるけど…。特に一年生は、どう対処していいか分からないって。あのジンですらね。
こういう冷たい雰囲気に加えて、美人ゆえの近寄りがたさから、みんな琴音先輩を苦手にしている。ただ、この人の映像制作の能力は半端ない。そこはみんな、問答無用で敬服。
「みんなの特徴よく出てるけど、特にユウキちゃんの妖しい魅力…、良い感じね。」
「ありがとうございます。そこは一番こだわりましたから。」
えっ、琴音先輩、マジ?
意外なセリフ…
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