第51話  今から脱ぎます…

文字数 809文字

 みんな、えっ!…て顔してる。
 無理もないよね…

「突然、ごめんなさい。でも、本気です。」

 僕はもう一度みんなの方をしっかり見据えた。

「僕のカラダ、男なのか、女なのか、みんなに見て判断してもらいたいんです。
 自分が医学的に男だってのは分かってます。100%男です。ハッキリした“証拠”がありますから…。
 でも、僕が知りたいのはそんなことじゃないんです。僕のカラダ、みんなから"見て"男のカラダなのか、女のカラダなのか、それが知りたいんです。
 どっちでもいいじゃんって思うかもしれません。でも、僕にとっては全然それじゃ済まされないんです。多分みんなは普段、自分が男なのか女なのかなんてこと考える機会、ほとんど無いと思います。でも、僕は日常的にその問題に曝されています。
 一人称の“僕”ってのもそう。みんなには安心して“僕”って言えるけど、知らない人には“わたし”って言ってます。でも実は…、どっちにも違和感覚えるんです。
 トイレひとつ取ってもそう。こんな格好で今さら男子トイレに入れないですけど、女子トイレに入るにしたって、ちょっとした罪悪感覚えます。
 お風呂なんてもう全然無理。男湯、女湯、どっちにも入れません。
 何かプライベートなことを書類に書いたりするときだって、必ず性別欄ってありますよね。書いた紙渡すと、えっ!て顔されます。いちいちそれを説明するのもホントにツラいし…

 僕って今までずっと、カラダは男だと思っていました。いや、頑なにそう自分に言い聞かせて来たのかもしれません。でも本当は違うんじゃないかって…。生理的な分類じゃ間違いなく男のカラダだけど、それでもホントは女のカラダなんじゃないかって…。さっき、荒井さんがおっしゃってましたよね。どこをとっても完全に女だって。声もこんななのに、男ってことあるのかな…って。それが知りたいんです。

 腰から上、今から脱ぎます。
 見たまんまを率直に教えてほしいんです。」
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