第55話 コーヒー☕️

文字数 704文字

 まずはびしょ濡れの服を脱いで着替えなきゃだ。この舞台衣裳、とても綺麗だけど着換えが面倒なんだ。特にこんなびしょ濡れだと一人で着替えるのは無理。でも女子部員たちが率先して手伝ってくれた。
 着替えが終わると、今度はまた一年生女子たちが髪をドライヤーで乾かして綺麗にセットしてくれた。みんなでワイワイ言いながら。

 楽しい。なんか…アホみたいに楽しい。
 みんなの温かさが身に染みる。
 幸せ過ぎて笑顔しか浮かんでこない。

 僕はもうすっかり女子更衣室の一員だった。肩身の狭い思いをすることも無い。
 でも、考えてみると、この部で肩身の狭い思いをした記憶なんて、一度も無いな…
 みんなへの感謝の思いを新たにする。



 着替えを終えて戻ると、シオン先輩が寄ってきた。

「大丈夫か?風邪引くなよ。」

そう言って、コーヒーを差し出してくれた。

「シオンちゃん、ありがと…」

 コーヒーを受け取る。

 あったかい!

「ユウキ、悪かったな。あんなびしょ濡れにさせた上に、長ゼリフまで言わせて。たいへんだったろ?でも、うまくやれてたよ。この場面大事だから、ちょっと無理強いしちまったけど…まあ、何て言うか…」 

「分かってるよ。大丈夫。それより、なかなかうまくやれなくてごめんね。何度も撮り直しで迷惑かけちゃったよね…」

「いや、上出来だよ。さっき撮ったやつ観たけど、期待してた以上だよ。ユウキの雰囲気がやっぱ映像をうまく引き立ててくれてる。こんな長回しだし、撮り直しは最初っから覚悟だから問題無いよ。ありがと。」

 そう言ってシオン先輩は、

「風邪ひくなよ…」

って僕の頭をポンと撫でた。

 うっ…うっ…、何よ…、シオンちゃんのくせに…
 キュンとさせないでよ…

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