第65話 琴音先輩と

文字数 869文字

 今回の飲み会には、もう一つ大きなお目当てがあった。それは、

 琴音先輩

 そう
 僕が"僕"って言えない最後の関門
 今日、先輩、珍しく参加されています。絶対に二人でお話したい。

 琴音先輩、今、三年生の映像製作の人たちと一緒にお話してる。あんまり自分から話しかけている様子は無いけど、けっこう楽しんでる感じ。ただ…、後輩たちとはまったく会話してないな。
 うーん
 手ごわそう
 でも、絶対話すんだ

 先輩の様子、さっきからずっと窺ってた。そしたらたった今、一番隅っこのテーブルに移ってタバコを取り出した。
 あそこって、換気口の真下なんだ。だから暗黙の喫煙エリアになってる。でも、女子でタバコ吸う子って、ほとんどいないし煙たいから、ほんの数人しか近寄らない。

 よし、行くなら今だ。
 思いきってグラス片手に近づいていった。

「こんばんは。隣、いいですか?」

 すると、琴音先輩、タバコに火を点けながらチラッと僕を見上げ、

「おうっ、来た、来た。待ってたよ、かわい子ちゃん…。まあ、座んなよ…」

 そう言ってタバコの箱をのけて、隣に座るスペース作ってくれた。

 えっ、待ってた?マジ?
 いい感じかも…

「ありがとうございます。失礼しまあす。」

 僕が隣に座ると同時に、向こうを向いて煙を吐き出した。

「ごめんよ。タバコ臭くて…」

「いえ、せっかく一服されてるのにすみません。」

「ほんと、吸ってないと落ち着かないなんて、マジ、クズだよね…」

 そう言って笑った。

「い、いえ、そんな…」

 それからまた煙を向こうに吐き出すと、タバコ片手に、僕の顔をジッと見つめながらこう言った。

「やっぱ、アンタ、綺麗だね…
 どいっつも、こいっつも、アンタに夢中になんの分かるわ…
 アホっぽいくせに、変な色気あんのよね。エロエロオーラさんざ出しちゃってさぁ。何だろ…、表情も、からだつきも、仕草も、スッケベだよねぇ…
 こりゃ、男だってホレるわ…」

「わたし、エロエロオーラ、出してますか?」

「出しまくりだよ、ッたく、気づけよ…」

 うーん、さすが、容赦ないな。
 でも、むしろ爽快。
 もっと話聞きたい。

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