第13話 憲斗とリサ

文字数 1,253文字

「ねえ、憲斗、リサとはうまくいってるの?」 

 ひとしきり今日のことを語り尽くした帰り道、途中から三人になったのを見計らうかのように、美優が憲斗に尋ねた。

「なんや、急に…
 うーん、でも、まあまあかな…」

「まあまあかよ、駄目じゃん!」

 美優が突っ込む。
 僕も少し気になるところがあった。

「そう言えば、最近あんまり一緒にいるところ見ないね。今日は観に来てたの?」

「いいや、来てない。」

「えっ、喧嘩でもしたの?」

「喧嘩って訳やないけど…、まあ、お互いいろいろあるわな…」

「そっか…、リサもいろいろ忙しいだろうしね…」

「ま、そういうことにしとくわ。」

 リサは僕らと同じ大学の同級生。半年ほど前から憲斗と付き合っている。

「リサ、最近なんとなく僕にツレナイんだよな…。僕、何か悪いこと言ったりしたかな…」

 前は憲斗と三人で一緒に食事に行くこともあった。学校でもリサの方から普通に話しかけてきてくれる仲だった。でも、最近は僕を避けてる気がする。多分、気のせいじゃない…

「お前は悪ない!」

「えっ?」

「いや、その…、ユウキは何も関係ないよ。俺らの問題やから…」

「だよね。余計なこと言ってごめんね…」

 僕は珍しく憲斗が語気を荒げたので驚いた。僕はそれ以上聞かないようにした。
 美優は黙って何か考えている様子だったけれど…



 いつものお別れの儀式、三人ハグ。
 三人一緒にハグした後、今度は二人ずつ交互にハグする。

「美優、バイバイ…」

「今日はありがと。憲斗、ちゃんとプリンセス送ってあげてね。イタズラしちゃダメだよ。」

「するか、アホ!親衛隊長が最悪の任務違背行為やないか…」

 僕らは先に美優を送って、家の前で分かれた。憲斗と二人になった。



「どんな話になるか分かんないけど、今年の夏合宿は大変そうだね。」

「ホンマやなあ。去年の比やないやろな。」

「でも、僕がプリンセスかあ…。シオン先輩、真面目に考えてくれてんのかな。あの人、真面目なのか、ふざけてんのか、よく分かんないからね。」

「大真面目やろ。俺も賛成やで。ユウキが適役やわ。いろんな意味でな。」

「いろんな意味で?」

「うん。まず役柄は、お前、見た目、めっちゃプリンセスって感じやし…」
 
 そこで、憲斗は笑い出した。

「そこは笑うとこじゃないでしょ。」

「悪い、悪い…、アハハ…。でも、冗談抜きでお前しかおらん。それに…
 杏先輩なんかと一緒にやれんわ。あの人やなくてよかった。今回も大変やったやん。」

「まあ…、僕ももうあんまり絡みたくない。」

「見た目は確かに綺麗かもしれんけど…、もひとつインパクト無いっつうか…、プリンセスっていうには普通過ぎるねん。性格は最悪やしな…。後輩がついて来んやろ。
 その点、お前やったら後輩みんな付いてきそうやな。役もお前の方が圧倒的にインパクトあるし合ってるわ。」

「ありがとう。でも、後輩かあ…」

「お前目当てでいっぱい入ってきそうやな。」

 うーん…
 でも、今日の感じだと、憲斗の言ってることもあながちハズレじゃないかもしれない。どんな後輩が入ってくるんだろな…
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