第35話 女どうしの飲み
文字数 1,724文字
その後ひなちゃんにお茶しよって言ったら、それだったらお酒飲みに行きましょ!って熱く誘われた。
「前からユウキ先輩と二人で飲みに行きたいと思ってました。憧れのユウキ先輩と二人で、お酒飲みながら “女どうし” の話、いっぱいしたいんです!」
だとか…。
僕もひなちゃんと “女どうし” の話をしたかったから喜んで承諾した。憧れ、なんて言われちゃったし。
それにしても、“女どうし” って話すこといっぱいあるんです。相手が自分の話を聞いてくれる人なら、多分永久に話してられる。
好きな女性芸能人は誰で、その子のどんなところが好きかとか…、その子の美容法や使ってるコスメがどんなので、そのコスメを自分も使っててチョーお勧めとか…、同級生や先輩たちがどこのを使ってるか、中でも美優が一番似合ってるから(そこで盛り上がりマックス!)、あれをどうやって真似たらいいか…、などなど。
で、急にシオン先輩と兵藤先輩を彼氏にするならどっちをとるかって話になって、散々議論した挙げ句、なぜか結論は仲良く“憲斗”で一致。
どれもこれも生きる上で絶対に欠かせない大事なお話ばかりです。
こういうお話がクダラナイとしか思えない男は、クタバンなさい…って女子のユウキは思います。本気で。
ひなちゃん、お酒強いし、明るくて楽しいから話に尽きない。たくさん飲んだ。
笑い疲れてちょっと沈黙になったとき、ひなちゃんが、こんなことを口にしたんだ。
「ユウキ先輩は、何でも持っていて羨ましいですね…」
って。
「ん?僕が?」
「そうですよ。だって、美人で、明るくて、みんなから好かれてて、良いなって思います。ホント優しいし楽しいから、みんな、ユウキ先輩の取り合いしてるじゃないですか。」
僕が、何でも持ってる?
そんなふうに言われるの初めてだな。
なんか意外。
「憲斗さんや美優さんとユウキ先輩の三人って、見てて羨ましいです。私もこの三人の中に入りたいなって思いますけど、三人の結びつきが強すぎて近寄れません。いいなあって、みんな思ってますよ。」
ひなちゃんは笑ってそう言った。
「そっか、そんなふうに見てくれてるんだね…
大学やサークルが僕にとって、最高に居心地良いのはあの二人のお陰なんだ。あの二人に受け入れてもらえてるから、安心して振る舞えてるんだと思う。みんなに明るいって言ってもらえるのも、あの二人に受け入れてもらえてる安心感からなんだろうね、きっと…
元は全然こんなじゃ無かったから。」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。暗かった。高校では、一応僕の取り巻きみたいな子もいたけど、やっぱり男っぽいイケメン男子のグループの方が目立つでしょ?そういう男子の周りには、目立つ女の子たちが集まるから、圧倒的に華やかで幅きかせてるんだ。僕たちなんてバカにされて隅っこに追いやられてた。暗いとか、キモいとか散々言われてね。
だから逆に、僕はそういう男っぽいイケメングループに憧れてたんだ。そっちの側にいたいなって…」
「ユウキ先輩だってイケメンじゃないですか!」
「ううん。僕はそもそも男に見られてなかったから…。かと言って女に見られてたわけでもない。どっちでもないキモいやつ…」
「ええっ!私だったらユウキ先輩の方がいい!」
「ありがとう…」
思わず、ハハッ…て笑ってしまったけれど、自嘲に満ちた乾いた笑いだった。
「今にして思うとね、僕の周りに寄ってきてくれた女の子や男の子の方がずっと優しくて魅力的な子たちだったんだ。ちゃんと自分を持ってて、やるべきことをやってる。ただ、派手さが無くて、あまり目立たなかったってだけ。目立たなかったっていうのも、落ち着いてて、いい意味で大人びていたっていうこと。
僕は見栄っ張りで、コンプレックスの固まりだったから、イケメン君グループの見てくれの華やかさだけに無闇に憧れてたんだと思う。だから、せっかく僕なんかに寄ってきてくれる素敵な女の子や男の子を遠ざけようとさえしてたんだ。彼らに囲まれてる自分が、イケてない気がしてね。
バカだよね、ホント…、情けないよ。
あの頃はあの子たちの良さが全然分かってなかった。自分の自信の無さを、ただあの子たちのせいにして現実逃避してた…」
「前からユウキ先輩と二人で飲みに行きたいと思ってました。憧れのユウキ先輩と二人で、お酒飲みながら “女どうし” の話、いっぱいしたいんです!」
だとか…。
僕もひなちゃんと “女どうし” の話をしたかったから喜んで承諾した。憧れ、なんて言われちゃったし。
それにしても、“女どうし” って話すこといっぱいあるんです。相手が自分の話を聞いてくれる人なら、多分永久に話してられる。
好きな女性芸能人は誰で、その子のどんなところが好きかとか…、その子の美容法や使ってるコスメがどんなので、そのコスメを自分も使っててチョーお勧めとか…、同級生や先輩たちがどこのを使ってるか、中でも美優が一番似合ってるから(そこで盛り上がりマックス!)、あれをどうやって真似たらいいか…、などなど。
で、急にシオン先輩と兵藤先輩を彼氏にするならどっちをとるかって話になって、散々議論した挙げ句、なぜか結論は仲良く“憲斗”で一致。
どれもこれも生きる上で絶対に欠かせない大事なお話ばかりです。
こういうお話がクダラナイとしか思えない男は、クタバンなさい…って女子のユウキは思います。本気で。
ひなちゃん、お酒強いし、明るくて楽しいから話に尽きない。たくさん飲んだ。
笑い疲れてちょっと沈黙になったとき、ひなちゃんが、こんなことを口にしたんだ。
「ユウキ先輩は、何でも持っていて羨ましいですね…」
って。
「ん?僕が?」
「そうですよ。だって、美人で、明るくて、みんなから好かれてて、良いなって思います。ホント優しいし楽しいから、みんな、ユウキ先輩の取り合いしてるじゃないですか。」
僕が、何でも持ってる?
そんなふうに言われるの初めてだな。
なんか意外。
「憲斗さんや美優さんとユウキ先輩の三人って、見てて羨ましいです。私もこの三人の中に入りたいなって思いますけど、三人の結びつきが強すぎて近寄れません。いいなあって、みんな思ってますよ。」
ひなちゃんは笑ってそう言った。
「そっか、そんなふうに見てくれてるんだね…
大学やサークルが僕にとって、最高に居心地良いのはあの二人のお陰なんだ。あの二人に受け入れてもらえてるから、安心して振る舞えてるんだと思う。みんなに明るいって言ってもらえるのも、あの二人に受け入れてもらえてる安心感からなんだろうね、きっと…
元は全然こんなじゃ無かったから。」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。暗かった。高校では、一応僕の取り巻きみたいな子もいたけど、やっぱり男っぽいイケメン男子のグループの方が目立つでしょ?そういう男子の周りには、目立つ女の子たちが集まるから、圧倒的に華やかで幅きかせてるんだ。僕たちなんてバカにされて隅っこに追いやられてた。暗いとか、キモいとか散々言われてね。
だから逆に、僕はそういう男っぽいイケメングループに憧れてたんだ。そっちの側にいたいなって…」
「ユウキ先輩だってイケメンじゃないですか!」
「ううん。僕はそもそも男に見られてなかったから…。かと言って女に見られてたわけでもない。どっちでもないキモいやつ…」
「ええっ!私だったらユウキ先輩の方がいい!」
「ありがとう…」
思わず、ハハッ…て笑ってしまったけれど、自嘲に満ちた乾いた笑いだった。
「今にして思うとね、僕の周りに寄ってきてくれた女の子や男の子の方がずっと優しくて魅力的な子たちだったんだ。ちゃんと自分を持ってて、やるべきことをやってる。ただ、派手さが無くて、あまり目立たなかったってだけ。目立たなかったっていうのも、落ち着いてて、いい意味で大人びていたっていうこと。
僕は見栄っ張りで、コンプレックスの固まりだったから、イケメン君グループの見てくれの華やかさだけに無闇に憧れてたんだと思う。だから、せっかく僕なんかに寄ってきてくれる素敵な女の子や男の子を遠ざけようとさえしてたんだ。彼らに囲まれてる自分が、イケてない気がしてね。
バカだよね、ホント…、情けないよ。
あの頃はあの子たちの良さが全然分かってなかった。自分の自信の無さを、ただあの子たちのせいにして現実逃避してた…」
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