第29話 僕が男子に伝えたいこと

文字数 1,659文字

 作ったものを少しずつお裾分けし、遅い夕飯も兼ねて試食してみた。でも、それだけだと明日のお弁当と同じになって楽しみも少なくなる。だから、みんなへの感謝の意味を込めて、これとは別に夕飯を作った。
 麺類は取りやめになったから丸々残っていたし、野菜や肉も余ったものが多かったので、みんなの夕飯くらいは直ぐに作れた。
 とっても感謝してもらえた。

 何よりも、みんなとの夕飯、泣きたくなるくらい楽しかった。みんな、よくやってくれたしね。
 ここにいる男子、心底誇りに思います。


「今日のユウキ先輩、めっちゃ手際良いんでびっくりしました。普段のポケーッとしたユウキ先輩からは想像できないっすよ。」

「コラ!」

「ホント、今日のユウキ先輩の顔、鬼気迫るものありましたよ。普段あんなにオットリして、笑顔スンゲエ可愛いのに。」

「ほんとに?エへ…」

「めっちゃ可愛いっすよ。そう言やこないだ、ミーティング中に居眠りしてるユウキ先輩の寝顔、マジ可愛かったよな?」

「クッソ可愛かった!今日もあの寝顔見られると思ったのに。」

「オイッ…」

「あんまカワイイから、俺写真撮ったんすよ。あ、見ます?ほら…」

「やめて!!」

 ま、心底誇りに思いまする…



 食べ終わったあと、憲斗が、「ユウキ、なんかみんなに話したいこと無い?」って僕に振ってくれた。

 うーん、せっかくだから言わせてもらうことにした。このメンバーになら伝わると思ったし。



 今日は皆さん、ありがとうございました。お疲れさまでした。また是非一緒にこういう機会持ちたいです。

 それで…、なんだけど、
 さっきジン君が、今日の僕はスゴい手際良かったって言ってくれたでしょ?あのね、去年、美優たち女の子と一緒に料理作る機会があったんだ。あの時も、けっこうな量と品数あったんだけど、美優、何を作るのか、それを作るのにどんな物がいくら必要で、それぞれどれくらいの時間をかけて、誰に何をやらせるのか、ほとんど一瞬で判断して、みんなにテキパキ指示しながら、アッという間に作ってしまったんだ。もちろん味も文句なし。
 あの時、女の人ってスゴいなって思った。僕だって料理を上手に作ることくらいはできたよ。でも、あんな手際よく、いろんなことを同時並行にやるなんて絶対ムリって思った。しかも美優だけじゃないんだ。ほかの女の子たちもそうだったんで、正直すごいショックだった。
 今日はあの時のことをイメージしながら、美優たちに対抗して、僕なりに段取り考えてやってみました。

 よく、女子力、って言葉耳にするでしょ?女子力って何なのか、僕にはよく分かんないけど、女子力なんてもの、女の子たちに求めちゃいけないと思うんだ。美優、"わたしは女子力無いから…" なんて、よく笑って言ってるけど全然そんなこと無い。多分美優、女子力なんて問題にしてないんだと思う。そんなのよりずっとスゴい力持ってるから。

 むしろね、女子力求められてるのって、男だと思うんだ。男って、小さい頃からやってもらうことに慣れてるから、率先して誰かの為にやること少ないし、気もきかない。やってもらって当然みたいな顔してる男って多いでしょ?年齢に関係なく…。でもこれは僕自身もそうだから、反省の意味を込めて言ってます。

 役割分担って名の下に、それを自然の流れに任せちゃうと、必ず男が得する流れができちゃうんだ。でも、そんなこと続けてると、絶対に上手くいかないし、いつか愛想尽かされてしまう。
 だから今日みたいなことを、特に一年生男子は意識して、女子に率先してやるように心掛けてみて。自分たちのためにね。やってあげてるなんて思っちゃ絶対にダメ。口に出すなんて論外!男は意識し過ぎるぐらいが丁度良いと思うの。女の子は元々そういう訓練されてきてるからね。

 いずれにしても今日の皆さんは素晴らしかったです。また是非一緒にやりましょう。
 ありがとうございました。

(拍手、拍手…、パチパチパチ…)

 みんな真剣に聞いてくれました。
 お母さんが伝えたかったことも、だいたい…こんなことだったのかな…
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