⭐️ 美優との一夜②(ユウキらしからぬ大胆な行動)

文字数 860文字

「美優、大丈夫?何か辛いことでもあったの?」

「ん?何でよ…、平気だよ、何も無いよ…」

 美優は再び僕の髪を撫で始めた。さっきよりも優しい指使いで。

 美優のサラサラの髪が僕の首筋に触れる。
 良い匂い…
 どこの香水つけてんのかな…

 いや
 それどこじゃないよ!
 
 僕は上体を起こして叫ぶように言った。

「美優、何かあったのなら言って!何か辛いことでもあったの?それ、僕に関係することかな?僕、何か美優を傷つけるようなことしたり言ったりしたかな?もしそうならごめん。謝るから。僕、そんなつもり無いから!絶対無いから!美優のこと大好きだから、そんな…」

「ユウキは何も関係ないよ」

美優は僕を遮って言った。

「ユウキがそんなことするわけ無いじゃん。今までだって一度も無いよ。私もユウキのこと大好きだよ。
 ユウキみたいな素敵な子がこの世にいるんだ、って知って正直ショックだった。ホント、大好き…」

 そう…ありがと…

 でもさ
 やっぱ変だよ
 こうしちゃいられない!

「美優…」

 僕は美優の腕を振りほどくと、今度は美優に覆いかぶさって体を強く抱きしめた。ユウキらしからぬ大胆な行動に自分でも驚いたけれど、これこそが正しい振る舞いだった。
 思った通りだ。
 美優は僕の胸にすがりついてきた。渾身の力を込めてしがみつき、僕の薄い胸に顔を埋めてきた。
 美優は泣いていた。肩を震わせ、必死でそれを覚られぬように声を抑えながらも泣いていた。

 どうしたの?

 僕はそれを言葉にするほど馬鹿じゃなかった。美優をしっかりと胸に抱き止め、背中をさすって、髪を撫で続けた。さっき美優が僕にしてくれたように、ゆっくりと、精一杯愛情を込めて同じ動作を繰り返した。僕の余計な一言より、この行為が一番救いになると思ったから。

 今は思う存分泣いて。
 安心して泣いて。
 それで、もし泣き終わった後に話したくなったら話して。
 その時は真剣に聞くから。
 本気で聞くから。
 僕もね、今まで何度も美優に助けられてきたんだ。
 だからね、安心して最後まで泣き通して。
 この手、離さないから、大丈夫。

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