第49話 僕ってエイリアン?

文字数 805文字

 写っているのは僕だけじゃない。僕を中央に据え、それを憲斗や美優を初め、何人かが取り囲む構図になっている。ただ、加工が加えられているのは周囲のみんな。つまり…

 僕には一切加工が施されていない

 憲斗には、野性的な荒々しさが加わり、そして美優は戦士だけど、彼女の凛々しさが一層引き立てられている。それによって、憲斗はより男っぽさが、美優はより女性的な美しさが増す。
 その結果、僕の中性的な雰囲気が不思議と際立つことになる。ホント、不思議なくらい際立つんだ。

 映画のポスターなので、僕だけ目立てばいいって訳じゃない。ただ、僕の中性的な特徴が際立つことで、SF映画に求められる異次元的な空気、ファンタジー性に、それなりの “らしさ” が説得力を帯びる。
 現にこのポスター、その試みに驚くほど成功している。

 こうやって見ると、僕ってひょっとしてエイリアン?そんな思いが脳裏を過る。
 しかも、この目…
 確かに荒井さんが言うように、女性の目じゃない。じゃあ、男の目かって言うとそれも違う気がする。荒井さんも、女の目じゃないってとこまでは見抜けたけど、そっから先は分かんなかったんじゃないかな…
 だったら僕、いったい何者なんだろ…?
 ホントにエイリアン?未知の遠い星からやってきた異星人…

 琴音先輩、明らかに僕の目の特徴に気がついてる。このポスターがハッキリとそれを物語っている。琴音先輩の目には、僕はどう映ってるんだろ…

 “ユウキ、きれい…”
 “ユウキ先輩、素敵…”

なんて言葉が聞こえてくる。自分で言うのもおかしいけど、確かに、“奇麗”だと思う。
 ただ、この“奇麗”さの正体、いったい何なんだろ…

 僕にはずっと、拭おうにも拭いきれない疑問があった。今回それはますます強まってしまった。何度も何度も心の中で反芻され続けてきた疑問。つまり…

 僕って男なの?女なの?
 男でもあり、女でもあるの?
 あるいはまた…、どちらでもないの?


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