第52話  みんなの前で裸体に

文字数 965文字

「ごめん、美優、後ろのボタンはずすの、手伝ってもらっていい?」

 美優は何も言わずに、そっと僕の後ろに回った。
 するとシオン先輩がすかさず、

「ちょっと待って!窓の近くの人、カーテン閉めて!」

って指示した。直ぐにすべてのカーテンが閉じられた。

 さすがだね、シオン先輩
 ありがと…

「ユウキ、いいの?はずすよ。」

「うん、お願い…」

 美優の指によって、一つ一つボタンが外されていく。
 最後のボタンを開けると、美優は僕の肩を両手で優しく包んで、

「降ろすよ…」

って囁いた。
 僕は黙ってうなづいた。
 次の瞬間、肩から衣裳がヒラリと滑り落ちた。
 おへその直ぐ下の辺りで、衣装を受け止める
 腰から上が完全に露わになる

 僕の肌、まっ白だな…
 普段日の光に曝されることのない胸なんか特に…

 とっても静か

「僕のカラダ、男なのか、女なのか、それともどっちでもないのか、見たままを教えてほしいんだ。ただ、目は考慮しないで。さっき荒井さんに指摘されて、目のことは分からなくなったから。だから…」

 僕は目を閉じた。

 そしてカラダの向きを時々変えたりして、みんなにいろんな角度から見てもらうように努めた。上半身は完全に露わになったまま…。



「もういいかな?」

 再び目を開いた。
 みんな黙ってうなづいた。
 ホント、静か…

「男だって思う人、手を挙げてもらえる?」

 誰一人として手を挙げなかった。

「じゃあ、女だって思う人…?」

 すると一斉にみんなの手が挙がった。ものの見事に“全員”の手が。

 そっか…、やっぱそうだったんだね…
 僕のカラダ、女だったんだ…
 胸なんてほとんど膨らみ無いけど、この曲線、女だよね。今まで、無理やり男ってことで通してきたけど…、やっぱどう見ても女性のカラダだよね…

 この時、なぜか、
「ユウキ、よく我慢してきたよね…」
っていう、お母さんの言葉が蘇ってきた。
 
 ホント、水泳の授業なんて地獄だったもんな…

 再び目を閉じる。
 すると両方の目尻から涙がツウッとこぼれ落ちた。
 涙はこれだけだった。
 でも、これは迂闊。
 こんなところで涙なんて流すはずじゃなかったから。
 裸体を曝すよりずっと恥ずかしいよ。

 涙を拭う。
 すると、自然と笑みがこぼれた。

 良かった。
 これで一つ踏ん切りがついた。

「みんな、変なことお願いしてごめんなさい。それから…、ありがとう。」
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