第16話 憲斗からのハグ

文字数 693文字

 あれこれ喋っているうちに家の前まで来た。
 三人が分かれるときはみんなでハグする。これはいつものこと。
 でも、憲斗と二人のとき…、これはいつものことじゃない。二人のときは、憲斗が、“じゃあな” で、僕が、“またね” って手を振って分かれる。
 それが今日はなぜかハグされた。
 それもいきなり…

 憲斗は僕の嫌がることをしない。
 時々、ハグとか言って、ドサクサに紛れてお尻を触ったり、無い胸を掴んだりしてくる男がいる。ヒドいのになると…
 そういう奴って、女の子にはやれないけど、僕になら許されると思ってるんだろう。

 でも、憲斗は絶対にしない。むしろ、そういうのを目にすると、やめろ!って怒る。
 だから、今日も三人でやるときみたいに自然にそれを受け入れた。
 ちょっと驚いたけれど…

 憲斗の体格は僕よりずっと大きくてガッシリしている。腕の太さなんて僕の倍くらいあるんじゃないかな。憲斗と言い、サカキ先輩と言い、本当は男ってこういう体格なんだなってつくづく思う。

 ハグのしかたも何時になく優しい感じ。気のせいかな…
 離れ際にはね…

「お前、そのかっこう、よう似合ってるわ。綺麗やわ…。夏、絶対大阪来いよ」

なんてセリフまで…

 ん?どうしたんだろ。酔ってるのかな…と思いつつ、僕も笑って憲斗を見つめ、

「うん、ありがとう。必ず行くよ!」

って答えた。

 この夜はそんな感じで憲斗と分れた。



 今日はホントにいろいろあった。
 楽しいことも不愉快なことも盛りだくさん。
 それに、ああ、疲れたなぁ…
 でも、大阪行きって楽しみができたから全部帳消しってことで。
 ただ、なんとなく憲斗の様子、いつもと違うなって感じながら…
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