第7話 光の中に

文字数 1,143文字

 早くも会場は大いに盛り上がっている。

 美優も憲斗も、ブラックの戦闘コスチュームに身を包み、プリンセスを守る戦士の役。2人とも運動神経抜群で、眩しい光と映像の中、縦横無尽に駆け回ってアクロバットな演技で観客を釘付けにする。最後に2人同時に披露する連続のバク転も…

 決まった!
 
と同時に盛大な拍手。これには僕も思わず拍手。

 2人ともすごいなあ…

 憲斗も格好いいけど、女戦士の美優はホント、カッコよすぎだ。

 みゆー…、とか、
 みゆーさーん…

って黄色い歓声が聞こえる。どれも女の子の声だ。
 分かる!
 絶対女の子から見てシビれるよ。

 ハアハア息を切らせながらも、二人はやり終えた満足感でいっぱいだ。溢れんばかりの笑顔で手を振って歓声に応えている。

 よかった…

 みんなと一緒に拍手する。
 でも、そろそろだ、僕の番…
 心臓のバクバク感は絶頂に達している。
 その音が聞こえてきそうだよ…


 舞台はクライマックス
 戦いに勝利しながらも、勝利と引き換えにこの国にかけられた呪いを一身に引き受け、国を去る決意を固めた美しきプリンセス。彼女をずっと傍で支え続けてきた若き戦士は、最後までプリンセスへの忠誠を誓う。その熱い思いはプリンセスの心を強く揺らし、二人は永遠の愛を誓う。
 で、ここで二人はひしと抱き合う。
 
 プリンセス役は杏先輩。我がSTINGSが誇る美女。その美貌はモデル級…というかホントに雑誌のモデルなんかによく載ってるから要するに…

 モデル!

 若き戦士は、これまた我がSTINGSが誇るイケメン男優のサカキ先輩。
 なんとお二人は本物の恋人という間柄。人も羨む美男美女カップルなんだけど、なかなか面倒なこのお二人。

 そんなことより…

 
 二人は手を取り合って旅立とうとする。その時…


 いよいよ僕の出番
 よし…
 僕は目をつぶって深呼吸すると、ありったけの声で、

「待って、兄さん!」

と、舞台へ飛び出ていった。その瞬間…

 ウウウウウ~~
   オオオオオオオ~~ッッ!!!!

ていう、歓声とも、悲鳴とも、怒号とも区別がつかない凄まじい声が沸き起こった。ホントに沸き起こったんだ…

 一瞬空気が揺れる。
 眩しい…
 光の中に僕がいる。
 派手な衣装の胸元がキラキラ光り輝いている。

 カワイー…、とか、ウッソー、とか、マジマジマジ…、とか、ヤッベー、とか、いろんな言葉がいっぺんに聞こえてくる。

 やっぱ、みんなもう僕のこと知ってんだね。
 セリフが飛びそうだよ…

 でも、たまたま耳に入った、「俺、あいつ、カバンに詰めて帰るわ…」っていう高校生の言い方が、何となく可笑しかったので少しリラックスできた。お陰で、その後のセリフはしっかり言えた。 

 ありがとう、高校男子。
 後でお礼にキスしたげる。

 そして、いよいよフィナーレ。
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